犬の食欲が急に増えたときは、単に「よく食べるようになった」と考えるのではなく、体重、飲水量、尿量、便の状態、薬の使用まで一緒に確認します。
成長期、運動量の増加、妊娠・授乳などで食欲が増えることもありますが、食べているのに痩せる、水をたくさん飲む、尿量が増える、便量が増えるなどの変化がある場合は、糖尿病、クッシング症候群、膵外分泌不全などの病気が関係することがあります。
食欲が増えたときに確認したい5項目
- 体重が増えているか、減っているか
- 水を飲む量・尿量が増えていないか
- 便の量・硬さ・色・においに変化がないか
- 薬を新しく始めていないか
- 食事量・運動量・生活環境が変わっていないか
食欲が増えても病気とは限らない
食欲の増加は、必ずしも病気を意味するわけではありません。VCAでは、成長期、激しい運動をする犬、妊娠・授乳中など、必要エネルギーが増えている状況では食欲が強くなることがあるとしています。
成長期
子犬は成長のために多くのエネルギーを必要とします。年齢と体重に合った給与量かを確認します。
運動量が増えた
散歩時間や運動量が増えた場合は、消費エネルギーの増加によって食欲が強くなることがあります。
妊娠・授乳中
妊娠後期や授乳中は必要エネルギーが増えるため、食欲が増える場合があります。
食事のエネルギー密度が変わった
フードを変更したあとに同じ「見た目の量」を与えていても、カロリーが低ければ必要量に足りていないことがあります。フードの代謝エネルギーと1日給与量を確認します。
「食べているのに痩せる」は重要なサイン
食欲が増えているのに体重が減っている場合は、摂取した栄養を十分に利用できていない病気が隠れていることがあります。
VCAでは、食欲増加が異常と考えられる例として、食べる量が増えているのに体重が減るケースを挙げています。
糖尿病では多食と体重減少が同時に出ることがある
犬の糖尿病では、血糖値が高くなり、体がブドウ糖をうまく利用できなくなります。そのため、食欲が増えているのに体重が減ることがあります。
Merck Veterinary Manualでは、犬の糖尿病の代表的な徴候として多食、多尿、多飲、体重減少を挙げています。
- 食欲が増えた
- 水をよく飲む
- 尿量が増えた
- 食べているのに痩せる
こうした変化が重なる場合は、血液検査や尿検査で確認します。
クッシング症候群でも食欲が増えることがある
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)では、コルチゾールが過剰になることで食欲が強くなることがあります。
Merck Veterinary Manualでは、犬のクッシング症候群でよく見られる徴候として、多食、多飲、多尿、暑がる、元気低下、腹部膨満、パンティング、筋力低下、脱毛などを挙げています。
中高齢犬で、食欲増加に加えて水をよく飲む、尿量が増えた、お腹が膨らんで見える、毛が薄くなったなどがあれば受診時に伝えます。
膵外分泌不全では食べても栄養を吸収しにくくなる
膵外分泌不全(EPI)は、膵臓から消化酵素が十分に分泌されず、食べ物を適切に消化・吸収しにくくなる病気です。
Merck Veterinary Manualでは、犬のEPIで体重減少、大量の軟便、食欲増加がよく見られるとしています。
【EPIを考える手掛かり】
- 食欲が強いのに痩せる
- 便量が増える
- 軟便・下痢
- 便が白っぽい・脂っぽい・においが強い
EPIは血液中のTLI(トリプシン様免疫反応)などの検査で診断します。
寄生虫でも食欲と体重の変化が出ることがある
消化管寄生虫がいると、栄養状態や便に変化が出ることがあります。特に子犬では注意が必要です。
便の状態、体重変化、駆虫歴、ノミの有無などを受診時に伝えます。必要に応じて便検査を行います。
薬の影響で食欲が強くなることもある
Merck Veterinary Manualでは、コルチコステロイドやフェノバルビタールなど、一部の薬で食欲が増えることがあるとしています。
新しい薬を始めたあとに食欲が急に増えた場合は、薬名・投与量・開始日を動物病院へ伝えます。
食欲が増えたからといって自己判断で薬を中止しないでください。中止方法に注意が必要な薬もあります。
行動・環境の変化で食べ物を欲しがることもある
医学的な異常がない場合でも、生活環境や行動の変化によって食べ物を要求する行動が強くなることがあります。
- 家族が食べ物を与える機会が増えた
- 要求するとおやつがもらえると学習した
- 退屈して食べ物を求める
- フード変更で満腹感が変わった
ただし、Merck Veterinary Manualでは、多食がある犬ではまず医学的な原因を除外することを勧めています。
食事量を急に増やす前に体重とBCSを確認する
食欲が強くなったからといって、すぐに主食を大幅に増やすと肥満につながることがあります。
体重だけでなく、肋骨の触れ方、腰のくびれなどボディコンディションスコア(BCS)も確認します。
現在の体型が適正で、運動量やフードの変更がないのに急に食欲だけが強くなった場合は、原因確認を優先します。
食欲増加の診察で伝える体重・飲水・便の変化
| 伝えること | 記録例 |
|---|---|
| 始まった時期 | 1週間前から急に |
| 食事量 | 以前と現在の1日量 |
| 体重 | 増えた・減った・変わらない |
| 飲水・尿 | 増えたかどうか |
| 便 | 量、硬さ、色、におい |
| 薬 | 薬名、量、開始日 |
| 生活 | 運動量、フード、家族構成などの変化 |
「食欲が増えた」だけでなく、食べているのに痩せるのか、体重も増えているのかを伝えることが重要です。
食欲増加の原因を絞るために検討される検査
食欲の増加に体重や飲水量の変化が伴う場合は、全身状態を確認しながら必要な検査を選びます。
身体検査
体重、体型、筋肉量、腹部、皮膚・被毛などを確認します。
血液検査
血糖値、肝臓・腎臓、電解質、炎症などを確認します。糖尿病や内分泌疾患が疑われる場合の手掛かりになります。
尿検査
尿糖、尿比重、感染などを確認します。糖尿病や多飲多尿がある場合に重要です。
便検査
寄生虫が疑われる場合に行います。
追加検査
初期検査の結果に応じて、クッシング症候群のホルモン検査、EPIのTLI検査、画像検査などが追加されることがあります。
受診を急ぎたい食欲増加の組み合わせ
【早めに受診したい状態】
- 食べているのに体重が減る
- 水を大量に飲む
- 尿量が大きく増えた
- 下痢・大量の便が続く
- 嘔吐を伴う
- 腹部が膨らんできた
- 元気低下や筋力低下がある
特に、食欲増加と体重減少が同時にある場合は「元気だから問題ない」と判断せず、原因を確認します。
食欲だけでなく体重・飲水・尿・便を一緒に見る
犬の食欲が急に増える原因には、成長期や運動量増加など正常な変化もありますが、糖尿病、クッシング症候群、膵外分泌不全、寄生虫、薬の影響などが関係することもあります。
受診時には、いつから食欲が増えたか、食事量、体重、飲水量、尿量、便、服薬、生活の変化を伝えます。
食欲が増えているのに痩せる、多飲多尿、便量増加などがある場合は、単なる食いしん坊と決めつけず動物病院で原因を確認してください。
参考:Merck Veterinary Manual「Behavior Problems of Dogs」「Diabetes Mellitus in Dogs and Cats」「Cushing Disease in Animals」「Exocrine Pancreatic Insufficiency in Dogs and Cats」、VCA Animal Hospitals「Testing for Increased Appetite」。確認日:2026年10月26日。

