犬の呼吸が苦しそうなときは、まず「呼吸が速いだけ」なのか、「息をするために強い力が必要になっている」のかを確認します。
胸やお腹を大きく動かす、首を伸ばす、横になれない、口を開けて苦しそうに呼吸する、舌や歯ぐきが青紫・灰色になるなどは、呼吸困難のサインです。
呼吸が明らかに苦しそうな場合は、自宅で原因を探し続けず、静かで涼しい環境にして、できるだけ早く動物病院へ連絡・受診してください。
「呼吸が苦しい」は救急症状として考える
Merck Veterinary Manualでは、呼吸困難は緊急評価が必要な症状に含まれています。
特に、次のような状態は救急性が高いサインです。
- 安静にしていても息が苦しそう
- 胸やお腹を大きく使って呼吸する
- 首を伸ばして息をする
- 肘を外側へ開いて立つ
- 横になれず座ったまま・立ったままでいる
- 口を開けて苦しそうに呼吸する
- 舌や歯ぐきが青紫・灰色になる
- ぐったりする・倒れる
舌や歯ぐきの色が青紫・灰色になっている場合は、重い低酸素状態の可能性があります。
まず犬を静かにして、動かしすぎない
呼吸が苦しい犬は、動くほど酸素を必要とします。
散歩させて様子を見る、階段を歩かせる、何度も立たせるなどは避けてください。
- 興奮させない
- 無理に歩かせない
- 静かな場所で休ませる
- 暑い場合は涼しい環境へ移す
- 病院へ電話して受け入れ可否を確認する
Merck Veterinary Manualでも、呼吸困難の患者では過度なストレスを避け、迅速に気道・呼吸・循環を評価することが重要とされています。
犬が楽に呼吸できる姿勢を崩さない
呼吸が苦しい犬は、自分で息をしやすい姿勢を取ることがあります。
たとえば、首を前へ伸ばす、肘を外へ張る、胸を起こした姿勢を保つなどです。
無理に横向きへ寝かせたり、抱きしめて胸を圧迫したりしないでください。
Merck Veterinary Manualでは、呼吸困難の犬で首を伸ばし、肘を外側へ開き、立位や座位を保つ「起座呼吸」がみられることがあるとされています。
首輪・服・ハーネスで胸や首を締め付けない
首や胸まわりを締め付けるものがある場合は、安全に外せる範囲で緩めます。
特に、首を伸ばして呼吸している犬へ強い圧をかけないようにします。
ただし、犬がパニックになって噛む可能性がある場合は無理に触らず、安全確保を優先してください。
呼吸数を数えるより「呼吸努力」を優先して見る
安静時呼吸数は参考になりますが、明らかに苦しそうな場合は数値を測ることに時間をかけないでください。
Merck Veterinary Manualでは、呼吸困難では呼吸数の増加だけでなく、呼吸努力・呼吸パターン・姿勢・粘膜色が重要な評価項目とされています。
| 見るところ | 注意する変化 |
|---|---|
| 胸・腹部 | 大きく上下する、腹部まで強く使う |
| 首 | 前へ伸ばす |
| 姿勢 | 横になれない、肘を外へ張る |
| 口 | 安静時でも開口呼吸 |
| 歯ぐき | 青紫、灰色、白っぽい |
パンティングと呼吸困難を同じものとして扱わない
暑いとき、運動後、興奮したときには、健康な犬でもパンティングが増えます。
一方で、涼しい場所で休んでも落ち着かない、胸やお腹を強く使う、首を伸ばす、横になれない、粘膜色が悪い場合は、通常のパンティングとして様子を見ないでください。
「呼吸回数が多いか」だけではなく、「呼吸にどれだけ力が必要になっているか」を見ることが大切です。
舌・歯ぐきの色を安全に見られる範囲で確認する
普段ピンク色の歯ぐきや舌が、青紫・灰色・白っぽく見える場合は重症の可能性があります。
Merck Veterinary Manualでは、青色や灰色の粘膜は重度の低酸素状態、白っぽい粘膜は貧血やショックなどの評価につながる所見とされています。
ただし、呼吸が苦しい犬の口を無理に開けて確認する必要はありません。自然に見える範囲で確認します。
大きな呼吸音がないか確認する
呼吸するときに、普段はない大きな音が聞こえる場合があります。
- ヒューヒュー
- ゼーゼー
- ガーガー
- いびきのような大きな音
Merck Veterinary Manualでは、上気道の狭窄などで大きな呼吸音が出ることがあり、重症例では青紫色の粘膜、開口呼吸、虚脱などがみられるとされています。
音を録音できる場合は診察の参考になりますが、録音のために受診を遅らせないでください。
咳・吐く・泡・鼻水なども伝える
呼吸困難に加えて、次の症状がないか確認します。
- 咳
- えずき
- 嘔吐
- 鼻水
- 口や鼻から泡状の液体
- 血が混じる
これらは原因を決めるためではなく、獣医師が呼吸器・心臓・誤嚥などを評価する材料になります。
暑い場所にいた場合は熱中症にも注意する
高温環境にいたあとで、激しいパンティング、よだれ、ふらつき、嘔吐、意識変化などがある場合は熱中症の可能性があります。
熱中症も緊急疾患です。
涼しい場所へ移し、病院へ連絡してください。急激に冷やしすぎたり、無理に水を飲ませたりせず、移動までの対応は病院の指示を受けます。
誤食・異物・首まわりのトラブルも伝える
急に呼吸が苦しくなった場合は、誤食や異物、首まわりへの外傷などの情報も重要です。
- 直前に食べ物・おもちゃを口にしていた
- 散歩中に拾い食いした
- 強く首輪を引っ張った
- 転倒・交通事故・落下があった
- 薬や化学物質を誤食した可能性がある
口やのどに異物があるように見えても、奥へ指を入れて無理に探らないでください。
人用の薬・吸入薬を自己判断で使わない
人用の気管支拡張薬、吸入薬、咳止め、鎮静薬などを自己判断で使わないでください。
原因によって必要な治療は異なり、呼吸状態が悪い犬では薬を飲ませる行為そのものが負担になる場合もあります。
以前処方された犬用薬でも、今回の症状へ自己判断で再利用せず、獣医師へ確認します。
食べ物・水を無理に口へ入れない
呼吸が苦しい犬に食事や大量の水を無理に与えると、さらに呼吸が乱れたり、誤嚥したりする可能性があります。
受診を優先し、飲食については病院へ確認します。
動画は安全に撮れる場合だけでよい
呼吸の様子は診察時に変わることがあるため、動画が役立つ場合があります。
ただし、既存稿の方針どおり、動画撮影のために歩かせる、姿勢を変える、呼吸困難の状態で撮影を続ける必要はありません。
受診を遅らせない範囲で、数秒撮れる場合だけにします。
病院へ向かう前に電話する
Merck Veterinary Manualでは、救急時は事前に動物病院へ電話し、症状を伝えて、安全な搬送方法などの指示を受けることを勧めています。
呼吸困難では、病院側が酸素投与などの準備をして待てる場合があります。
- 「呼吸が苦しそう」と最初に伝える
- 舌・歯ぐきの色
- 自力で立てるか
- 意識はあるか
- いつから悪化したか
- 咳・嘔吐・外傷・誤食の有無
移動中はできるだけ興奮させない
呼吸が苦しい犬は、移動そのものが負担になります。
車内を暑くしない、胸や首を圧迫しない、楽に呼吸できる姿勢を崩さないようにします。
大型犬で自力歩行が難しい場合は、無理に立たせず、病院へ搬送方法を相談してください。
病院ではまず呼吸を安定させる処置が優先されることがある
呼吸困難の犬では、原因検査より先に酸素投与などで状態を安定させることがあります。
Merck Veterinary Manualでは、救急トリアージで気道・呼吸・循環を優先し、重い呼吸困難では酸素投与や必要に応じた気道確保などを行うとしています。
状態が安定してから、胸部レントゲン、超音波、血液検査、パルスオキシメトリーなどが検討されます。
原因を詳しく確認したい場合
呼吸が苦しくなる原因には、気道・肺・胸腔・心臓・熱中症・アレルギー反応など複数あります。
診療費を確認したい場合
「苦しそう」ではなく呼吸数だけが速い場合
胸やお腹を強く使う様子はなく、「回数が多い」ことが中心なら、呼吸が速いときの記事も参考にできます。
あわせて確認したい関連記事
関連する基礎知識もあわせて確認すると、次に何を確認・準備すべきか整理しやすくなります。
救急受診のチェックリスト
- 安静時でも呼吸が苦しい
- 胸・お腹を大きく使っている
- 首を伸ばしている
- 横になれない
- 口を開けて苦しそうに呼吸している
- 舌・歯ぐきが青紫・灰色・白っぽい
- ぐったり・虚脱がある
- 意識がおかしい
- 大きな異常呼吸音がする
- 病院へ電話して受診準備をしている
犬の呼吸が苦しそうなときは、呼吸数だけでなく、胸・お腹の動き、首の姿勢、横になれるか、開口呼吸、舌・歯ぐきの色を確認します。
呼吸に強い力が必要、横になれない、舌・歯ぐきが青紫・灰色、倒れるなどの症状がある場合は救急受診を優先してください。
受診までの間は、犬を静かにし、暑さを避け、胸や首を締め付けず、楽に呼吸できる姿勢を崩さないようにします。
薬・食事・水を無理に与えたり、動画撮影や原因探しのために受診を遅らせたりしないことが大切です。


