犬の健康診断の費用は、「健康診断」という名前だけでは決まりません。問診と身体検査だけのコースもあれば、血液検査、尿検査、便検査、レントゲン、超音波などを組み合わせるコースもあります。
そのため、料金を見るときは「いくらか」だけでなく、何が含まれていて、何が別料金なのかを確認することが大切です。
健康診断の見積もりは「診察・身体検査」「基本検査」「追加検査」「結果説明・再診」に分けると、実際の支払額を把握しやすくなります。
犬の健康診断では何に費用がかかる?
健康診断では、犬の年齢、既往歴、生活環境、これまでの検査結果などを踏まえて、必要な検査を組み合わせます。
| 費用項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 診察・身体検査 | 体重、体型、聴診、口腔、皮膚、関節、腹部などを確認 |
| 血液検査 | 血球、肝臓・腎臓、血糖、電解質などを確認 |
| 尿検査 | 尿比重、糖、蛋白、沈渣などを確認 |
| 便検査 | 寄生虫などを確認 |
| 画像検査 | レントゲン、超音波などを必要時に実施 |
| 追加検査 | 血圧、内分泌検査、感染症検査などを必要に応じて追加 |
AAHA・AVMAの犬の予防医療ガイドラインでは、少なくとも年1回の獣医師による診察を基本とし、年齢や健康状態によってはより頻回の診察が適切な場合があるとしています。
まず診察・身体検査の範囲を確認する
健康診断では、検査機器を使う前に、問診と身体検査から始まります。
身体検査で確認される主な項目
- 体重・ボディコンディション
- 心音・呼吸音
- 口腔・歯
- 目・耳
- 皮膚・被毛
- リンパ節
- 腹部
- 関節・歩き方
AAHA・AVMAでは、包括的な身体検査に加え、歯科評価、痛み評価、体型・筋肉状態なども健康評価に含めています。
「血液検査が正常だった=健康診断で異常なし」とは限りません。身体検査と検査結果を合わせて評価します。
血液検査の費用は検査項目数で変わる
血液検査では、赤血球・白血球・血小板などを見る血球検査と、肝臓・腎臓・血糖・電解質などを見る生化学検査を組み合わせることがあります。
健康診断コースによっては、検査項目数が異なります。「血液検査付き」とだけ書かれている場合は、何項目を調べるのかを確認します。
血液検査で確認すること
- CBC・血球検査が含まれるか
- 生化学検査は何項目か
- 腎臓・肝臓・血糖など、どの項目を見るか
- 院内検査か外注検査か
- 結果説明は当日か後日か
血液検査について詳しく知りたい場合は、次の記事で受診前の確認事項を整理しています。
尿検査・便検査はセットか別料金か確認する
尿検査や便検査は、健康診断コースに含まれる病院もあれば、別料金で追加する病院もあります。
尿検査
尿検査では、尿比重、糖、蛋白、潜血、沈渣などを確認します。腎臓や尿路の状態を評価するうえで役立ちます。
特にシニア犬では、AAHAの2023年シニアケアガイドラインで、血液検査と尿検査を組み合わせて定期的に評価する考え方が示されています。
便検査
便検査では、寄生虫などを確認します。AAHAでは、犬の年齢や生活環境、予防薬の使用状況などに応じて便検査の頻度を判断するよう案内しています。
- 尿・便検査は健診料金に含まれるか
- 自宅で採取して持参するか
- 採取する量と保存方法
- 何時間以内の検体が必要か
レントゲン・超音波は全頭に必須ではない
画像検査は、健康診断だから必ず全頭に行うものではありません。年齢、犬種、身体検査、既往歴、血液・尿検査の結果などから必要性を判断します。
AAHAのシニアケアガイドラインでも、画像検査は臨床的に必要な部位へ行うことが推奨されています。
レントゲン検査
胸部・腹部、骨・関節などを評価するときに使われます。撮影する部位や枚数、鎮静の有無で費用が変わることがあります。
超音波検査
肝臓、腎臓、膀胱、脾臓、消化管など腹部臓器の状態を詳しく確認したい場合などに使われます。
画像検査は「多く受けるほど安心」と考えるのではなく、今回何を確認する目的で必要なのかを聞いてから追加します。
シニア犬は検査項目と受診頻度が増えることがある
年齢を重ねると、見た目には元気でも慢性疾患が見つかることがあります。
AAHAの2023年シニアケアガイドラインでは、健康なシニア犬でも、CBC、血液生化学、尿検査をおおむね6~12か月ごとに行うことを推奨しています。また、AAHAの飼い主向け案内では、シニアペットは6か月ごとの診察が推奨されています。
| 確認項目 | シニア犬で見るポイント |
|---|---|
| 血液検査 | 以前の結果と変化を比較する |
| 尿検査 | 腎臓・尿路の変化を確認する |
| 血圧 | 必要に応じて測定する |
| 甲状腺等 | 症状や年齢に応じて検討する |
| 画像検査 | 身体検査・検査値から必要部位を選ぶ |
ただし、「7歳になったら全犬が同じ検査を受ける」という意味ではありません。犬種、体格、持病、過去の検査値などを踏まえて獣医師と検査内容を決めます。
健康診断の費用は「コース料金」だけで比較しない
動物病院の健康診断には、複数のコースが用意されていることがあります。
安い・高いだけではなく、検査内容が自分の犬に合っているか確認します。
コース比較で見る項目
- 診察料が含まれているか
- 血液検査の項目数
- 尿・便検査の有無
- レントゲン・超音波の有無
- 結果説明が料金に含まれるか
- 異常が見つかった場合の追加検査は別料金か
同じ「健康診断Aコース」でも、病院が違えば内容は異なります。コース名ではなく中身を比較します。
見積もりで確認したい7項目
- 診察料は含まれていますか
- 血液・尿・便検査はそれぞれ含まれていますか
- 画像検査を追加する場合はいくらですか
- 採血・採尿・鎮静などは別料金ですか
- 結果説明の再診料は別ですか
- 異常値が出た場合に想定される追加検査は何ですか
- 税込みで今回の支払総額はいくらですか
「健康診断○円」ではなく、今回の会計と、異常が見つかった場合の次の費用を分けて聞くのがポイントです。
異常が見つかると追加費用が発生する
健康診断は「異常がないことを確認して終わる」だけではありません。検査結果に変化があれば、再検査や追加検査が提案されることがあります。
| 健診で見つかった変化 | 追加され得る検査 |
|---|---|
| 腎臓関連の異常 | 尿検査、血圧、追加血液検査、超音波等 |
| 肝臓関連の異常 | 追加血液検査、超音波等 |
| 心雑音 | 胸部レントゲン、心エコー等 |
| しこり | 細胞診、画像検査等 |
| 関節・歩行異常 | 整形外科検査、レントゲン等 |
追加検査はすべて一度に行うとは限りません。緊急性や検査結果に応じて順番を決めます。
健診前の絶食・飲水・薬は予約時に確認する
血液検査や超音波検査を予定している場合、病院から絶食を指示されることがあります。ただし、必要な時間や飲水の扱いは検査内容や犬の状態によって異なります。
自己判断せず確認すること
- 何時間絶食するか
- 水は飲ませてよいか
- 朝の薬を飲ませるか
- インスリンなど定時投薬をどうするか
- 尿・便を持参するか
持病の薬やインスリンなどを、健康診断のために自己判断で中止しないでください。予約時に動物病院へ確認します。
受診前に持参すると役立つもの
- 過去の健康診断結果
- 血液・尿検査の結果
- ワクチン・予防歴
- 現在飲んでいる薬・サプリ一覧
- 現在のフードと1日の給与量
- 最近気になる行動・症状のメモ
過去の検査結果があると、「正常範囲内かどうか」だけでなく、以前から数値がどう変化しているかを比較できます。
健康診断は「元気なときの基準値」を残す意味もある
健康診断は、すべての病気を見つける検査ではありません。一方で、体重や検査値を元気な時期から記録しておくと、その犬自身の変化を追いやすくなります。
AAHAのシニアケアガイドラインでも、健康な時期の評価と継続的なモニタリングが、加齢による変化や慢性疾患の発見に役立つとしています。
- 受診日
- 体重・体型
- 検査結果
- 前年から変わった項目
- 追加検査の有無
- 次回の健診時期
ペット保険は健康診断が対象外の場合もある
ペット保険は病気やケガの診療を補償する商品が中心で、予防目的の健康診断やワクチンなどが補償対象外になっていることがあります。
一方、健診で異常が見つかり、その後に病気として診療・検査を受けた場合の扱いは契約によって異なります。
見積もり時には病院だけでなく、加入中の保険の約款・契約内容も確認します。
年間予算には健康診断を「予定医療費」として入れる
健康診断は、急な病気やケガと違い、ある程度時期を決められる支出です。
家計では、ワクチンや予防費、健康診断などの予定支出と、突然の診療費を分けておくと管理しやすくなります。
犬の医療費全体を年間予算へ組み込む方法は、こちらの記事で詳しく整理しています。
健康診断の費用は「検査内容」と「追加費用」で確認する
犬の健康診断は、問診・身体検査だけのものから、血液、尿、便、画像検査まで含むものまで内容がさまざまです。
費用を確認するときは、診察料、基本検査、追加検査、結果説明・再診を分け、コース名だけで比較しないようにします。
「一番検査項目が多いコース」を選ぶことが目的ではなく、年齢・既往歴・過去の検査結果・現在の状態に合った健診内容を獣医師と決めることが大切です。
参考:AAHA–AVMA Canine Preventive Healthcare Guidelines、AAHA「2023 Senior Care Guidelines for Dogs and Cats」「Diagnostic Tests and Recommended Frequencies for Senior Dogs and Cats」



