犬のレントゲン検査は、骨折や関節の異常、胸部・腹部の病変、誤食した異物などを確認したいときに検討される代表的な画像検査です。
一方で、レントゲンだけですべての病気が分かるわけではありません。臓器の内部や軟らかい組織を詳しく見るには、超音波検査やCT、MRIなど別の検査が適している場合があります。
「レントゲンを受けるか」ではなく、「今回の症状で何を確認するために撮影するのか」を獣医師へ確認すると、検査の意味を理解しやすくなります。
受診前に知っておきたいポイント
- レントゲンは骨・胸部・腹部などの評価に使われる
- 通常は複数方向から撮影する
- 撮影自体は痛みを伴わない
- 痛みや不安、体動が強い場合は鎮静が必要になることがある
- レントゲンで分からない場合は超音波・CT・MRIなどが追加されることがある
犬のレントゲン検査はどんなときに受ける?
レントゲン検査を行うかどうかは、症状、身体検査、病歴などをもとに獣医師が判断します。
足を痛がる・骨折や関節異常が疑われるとき
転倒や事故のあとに足を着けない、強く痛がる、腫れている場合などは、骨折や脱臼などを確認するためレントゲンを撮影することがあります。
Merck Veterinary Manualでは、四肢や関節のレントゲンでは、病変を見逃さないため通常は少なくとも2方向から撮影するとしています。
咳・呼吸が速い・呼吸が苦しそうなとき
胸部レントゲンでは、肺、心臓の大きさ、気管、胸腔内の状態などを確認します。
咳、速く浅い呼吸、呼吸困難などがある場合、肺炎、肺水腫、胸水、気胸などを評価するため撮影が検討されることがあります。
嘔吐・腹痛・お腹の膨らみがあるとき
腹部レントゲンでは、胃腸のガス、臓器の大きさや位置、異物、結石などを確認する手掛かりになります。
誤食が疑われる場合も検討されますが、すべての異物がレントゲンにはっきり写るわけではありません。
誤食・異物が疑われるとき
金属などX線を通しにくい物は確認しやすい一方、材質によっては通常のレントゲンだけでは見えにくいことがあります。
その場合は、時間を置いて再撮影したり、造影検査や超音波など別の検査を組み合わせたりすることがあります。
しこり・腫瘤や臓器の異常が疑われるとき
胸部や腹部の腫瘤、臓器の拡大などを確認するために撮影されることがあります。
ただし、レントゲンで「影」が見えても、それだけで腫瘍の種類を確定することはできません。超音波、CT、細胞診、生検などが必要になる場合があります。
レントゲンでは何が分かる?
レントゲンは、X線が体を通過するときの吸収されやすさの違いを画像にする検査です。
| 確認しやすいもの | 例 |
|---|---|
| 骨 | 骨折、変形、関節の変化 |
| 胸部 | 肺、心臓の大きさ、胸腔 |
| 腹部 | 臓器の大きさ・位置、ガス、結石など |
| 一部の異物 | 金属などX線を通しにくい物 |
Merck Veterinary Manualでは、レントゲンは骨、外傷、変形、腫瘤、一部の異物などの評価に有用とされています。
レントゲンだけでは分かりにくいものもある
レントゲンは便利な検査ですが、すべての組織を同じ精度で確認できるわけではありません。
特に臓器の内部構造や軟らかい組織は、超音波検査の方が詳しく評価できる場合があります。
- 臓器の内部を詳しく見たい → 超音波
- 複雑な骨・頭部・胸腹部を断層で見たい → CT
- 脳・脊髄など軟部組織を詳しく見たい → MRI
- 病変の細胞を確認したい → 細胞診・生検
なぜ複数方向から撮影するの?
レントゲンは立体の体を2次元の画像として表示するため、1方向だけでは病変が他の組織と重なって見えないことがあります。
そのため、胸部・腹部・骨・関節などでは複数方向から撮影し、位置や形を比較します。
Merck Veterinary Manualでは、犬猫の胸部では左右の横向き像と背腹・腹背方向など、腹部でも複数方向の画像を組み合わせることが推奨されています。
「レントゲン1枚=検査1回」とは限らず、診断に必要な撮影枚数は部位や目的で変わります。
レントゲン検査は痛い?
レントゲンのX線を当てること自体に痛みはありません。
ただし、骨折、関節炎、脊椎の痛みなどがある犬では、正しい姿勢にするため体を動かすと痛むことがあります。
無理に体位を取らせると負担になる場合は、痛み止めや鎮静を検討します。
鎮静や麻酔が必要になることはある?
すべての犬で鎮静が必要なわけではありません。落ち着いて体位を保てる場合は、覚醒したまま撮影できることもあります。
一方でMerck Veterinary Manualでは、質の高い画像を撮影するため、次のような場合に鎮静や短時間麻酔が必要・望ましいことがあるとしています。
- 強い不安や恐怖がある
- 動いてしまい撮影位置を保てない
- 痛みがあり体位保持が難しい
- 脊椎など正確な姿勢が特に重要
鎮静を使う場合は、検査費とは別に鎮静薬やモニタリングなどの費用が加わることがあります。
呼吸状態が悪い犬は撮影より安定化を優先することがある
呼吸困難が強い犬では、体を横にしたり固定したりすることが大きな負担になる場合があります。
そのため、状態によっては酸素投与などで呼吸を安定させてからレントゲンを撮影します。
呼吸が苦しそうな犬では、「レントゲンを撮って原因を調べる」より先に救急処置が必要になる場合があります。
放射線による被ばくは大丈夫?
レントゲンではX線を使用するため、放射線被ばくはゼロではありません。
一方、診断用レントゲンは必要な部位へ短時間照射して画像を得る検査です。Merck Veterinary Manualでは、現代のX線装置は過去より低い線量で撮影できる一方、適切な放射線安全管理が重要としています。
検査が必要な場合は、病気を見つける利益と被ばくを含む負担を獣医師が考慮して判断します。
妊娠している可能性がある場合は先に伝える
妊娠中または妊娠の可能性がある犬では、検査目的や撮影部位によって判断が変わるため、必ず事前に伝えます。
妊娠確認や胎児数の評価など、妊娠中にレントゲンが使われる場合もありますが、必要性と時期は獣医師が判断します。
受診前に絶食は必要?
通常のレントゲンだけなら、必ずしも絶食が必要とは限りません。
ただし、鎮静・麻酔を予定している場合や、造影検査、超音波など別の検査を同時に行う場合は、食事制限を指示されることがあります。
自己判断で絶食させず、予約時に「食事と水はどうすればよいか」を確認します。
服用中の薬や過去の画像は持参する
受診時には、現在使っている薬、持病、過去の手術歴などを伝えます。
以前に別の動物病院でレントゲンを撮影している場合は、画像データや検査報告を持参できるか確認します。過去画像と比較することで、病変の変化を評価しやすくなる場合があります。
検査前に確認したい費用項目
動物病院の診療費には全国一律の料金がありません。検査部位、撮影枚数、鎮静、専門医による読影などによって費用が変わります。
【見積もりで確認したいこと】
- レントゲン撮影料
- 何方向・何枚程度撮影する予定か
- 鎮静が必要になった場合の追加費用
- 造影検査を行う可能性があるか
- 専門医・画像診断医の読影料が別か
- 超音波やCTなど追加検査の可能性
「レントゲンはいくらですか」だけでなく、今回の症状ではどの部位を何方向撮影する予定なのかまで確認すると総額を把握しやすくなります。
検査結果はその場で確定診断になるとは限らない
レントゲンで異常が見つかっても、その画像だけでは病名を確定できない場合があります。
例えば、肺に異常な影がある、腹部にしこりのような影があると分かっても、その原因を確認するには追加の画像検査や細胞診などが必要になることがあります。
レントゲンは「診断の答えそのもの」ではなく、原因を絞るための重要な情報の一つと考えます。
受診前に獣医師へ聞いておきたいこと
- 今回レントゲンが必要な理由
- どの部位を確認するのか
- 何方向から撮影するのか
- 鎮静の可能性があるか
- 食事・水の制限が必要か
- レントゲンで分からない場合の次の検査
- 検査全体の概算費用
何を確認するためのレントゲンかを理解して受ける
犬のレントゲン検査は、骨折や関節の異常、胸部・腹部の病変、一部の異物などを調べるときに使われます。
撮影自体は痛みを伴いませんが、正確な姿勢を保つ必要があるため、痛みや不安が強い犬では鎮静が検討されることがあります。また、レントゲンでは分かりにくい病変では超音波、CT、MRIなど別の検査が必要です。
受診前には「今回何を確認するための検査か」「鎮静は必要か」「何方向撮るか」「追加検査の可能性」「総額」を確認し、検査の目的を理解して受けるようにしましょう。
参考:Merck Veterinary Manual「Radiography of Animals」「Diagnostic Imaging」。確認日:2026年10月26日。

