犬が水をたくさん飲む状態は、暑い日や運動後など一時的なこともありますが、腎臓病、糖尿病、ホルモン疾患、子宮蓄膿症などの病気が隠れていることもあります。
「よく水を飲む」という症状だけでは原因を特定できません。飲水量と尿量が一緒に増えているのか、食欲・体重・元気・嘔吐など他の変化があるのかを確認することが重要です。
原因を考えるときは、「いつから増えたか」「1日にどれくらい飲むか」「尿も増えたか」「ほかの症状があるか」をセットで記録して動物病院へ伝えましょう。
まず「本当に飲水量が増えたか」を確認する
水の減りが早いと感じても、多頭飼育ではどの犬が飲んだか分からないことがあります。また、水をこぼす犬では実際の飲水量より多く見える場合があります。
可能であれば、24時間で与えた水の量と残った量を測ります。
記録したい項目
- 24時間の飲水量
- 犬の体重
- 尿の回数・量
- 飲水量が増えた時期
- 食欲・元気・体重変化
- 現在飲んでいる薬
一般に、1日100mL/kgを超える飲水は多飲の目安として扱われることがありますが、実際の必要量は食事中の水分、気温、運動量などでも変わります。数字だけで病気を判断せず、持続する変化として評価します。
暑さ・運動・食事で一時的に増えることがある
病気以外でも飲水量が増えることがあります。
- 暑い日
- 長い散歩や激しい運動の後
- ドライフード中心になった
- 塩分の多いものを食べた
- 授乳中
こうした要因が明確で、体調に問題がなく、その後いつもの飲水量へ戻る場合は一時的な変化のことがあります。
ただし、数日続く、夜中にも何度も水を飲む、尿量まで明らかに増える場合は病気の可能性を考えます。
腎臓病では尿を濃くできず水を多く飲むことがある
慢性腎臓病では、腎臓が尿を十分に濃縮できなくなることで尿量が増え、それを補うために飲水量が増えることがあります。
Merck Veterinary Manualでは、慢性腎臓病の比較的早い段階で現れる症状として、多尿・多飲が挙げられています。
進行すると、次のような症状を伴うことがあります。
- 食欲低下
- 体重減少
- 嘔吐
- 元気がない
- 脱水
水を多く飲むからといって飲水を制限してはいけません。腎臓病などでは必要な水分を取れなくなり、脱水につながる可能性があります。
糖尿病では「よく飲む・よく尿をする・体重が減る」が手がかりになる
糖尿病では血糖値が高くなり、尿中へ糖が出ることで尿量が増え、それに伴って水を多く飲むことがあります。
Merck Veterinary Manualでは、犬の糖尿病でよく見られる症状として、多尿、多飲、食欲増加、体重減少を挙げています。
糖尿病で一緒に見られることがある変化
- 尿量が増える
- 食欲があるのに体重が減る
- 元気が低下する
- 白内障が進むことがある
クッシング症候群では飲水・尿・食欲が増えることがある
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)は、コルチゾールが過剰になる病気です。
Merck Veterinary Manualでは、犬で多尿・多飲のほか、食欲増加、パンティング、筋力低下、腹部膨満、脱毛などが見られることがあるとしています。
「年を取ったから水をよく飲む」と決めつけず、シニア犬で飲水量が増え続ける場合は検査を受けます。
未避妊の雌では子宮蓄膿症にも注意する
避妊手術をしていない雌犬では、子宮蓄膿症でも多飲・多尿が見られることがあります。
子宮蓄膿症は子宮内に膿がたまる病気で、全身状態が悪化すると命に関わることがあります。
【未避妊の雌で急いで確認したい症状】
- 元気がない
- 食欲が落ちた
- 嘔吐
- お腹が張る
- 陰部から膿・血のような分泌物が出る
- 発情後に飲水量が増えた
未避妊の雌犬で多飲と体調不良が同時にある場合は、様子を見続けず早めに動物病院へ相談してください。
尿崩症では大量の薄い尿と強い飲水が見られる
尿崩症では、体内の水分を保つ働きに関係する抗利尿ホルモン(ADH)の産生や作用に問題が起こり、大量の薄い尿が出ることがあります。
失った水分を補うために、犬は多量の水を飲みます。
尿崩症は比較的まれで、腎臓病や糖尿病など他の一般的な原因を除外しながら診断します。
アジソン病などのホルモン疾患でも起こることがある
副腎皮質機能低下症(アジソン病)などでも、多飲・多尿が見られることがあります。
アジソン病では、元気消失、食欲低下、嘔吐、下痢、体重減少など、消化器症状や全身症状を伴うことがあります。
症状が良くなったり悪くなったりすることもあり、飲水量だけでは判断できません。
肝臓病・高カルシウム血症なども原因になる
多飲・多尿の原因は腎臓や糖尿病だけではありません。
肝疾患、血液中のカルシウム濃度が高くなる高カルシウム血症、感染症などでも尿量と飲水量が増える場合があります。
そのため、症状だけから家庭で病名を絞り込むのは危険です。
薬の影響で水を多く飲むこともある
ステロイド薬や利尿薬など、一部の薬では飲水量・尿量が増えることがあります。
薬を開始・増量したあとに飲水が増えた場合は、薬の名前、量、開始日を動物病院へ伝えます。
副作用が心配でも、処方薬を自己判断で中止・減量せず、処方した獣医師へ相談してください。
「水を飲む量」と「尿量」はセットで確認する
多飲と多尿は一緒に起こることが多いため、飲水量だけでなく排尿の変化も重要です。
| 確認項目 | 伝えたい内容 |
|---|---|
| 尿の回数 | 以前より増えたか |
| 尿の量 | 1回量・全体量が増えたか |
| 色 | 薄くなった、血が混じるなど |
| 失敗 | 室内で漏らすようになったか |
| 夜間 | 夜中の排尿が増えたか |
水を制限して原因を確かめない
「飲みすぎか確認するため」と水を取り上げるのは避けてください。
多尿・多飲を起こす病気では、失った水分を補うために飲んでいる場合があります。水を制限すると脱水や電解質異常につながる可能性があります。
VCAで紹介されている水制限試験も、尿崩症などを詳しく調べる際に獣医療下で行う検査であり、家庭で自己判断で行うものではありません。
動物病院ではまず血液検査と尿検査が基本になる
多飲・多尿の原因を調べる場合、問診と身体検査に加えて、血液検査・尿検査が重要です。
- 血糖値
- 腎機能に関する数値
- 電解質
- 肝臓関連項目
- カルシウムなど
- 尿比重
- 尿糖
- 尿蛋白
- 尿沈渣
VCAでも、多飲・多尿の初期評価では血球計算、血液生化学、尿検査などを組み合わせて原因を絞る方法が示されています。
必要に応じて追加検査を行う
基本検査だけで原因が分からない場合や、特定の病気が疑われる場合は追加検査を行います。
- 腹部超音波検査
- X線検査
- 尿培養
- ホルモン検査
- 血圧測定
- 尿崩症を評価する専門検査
すべての犬に同じ検査を行うわけではなく、年齢、性別、症状、血液・尿検査の結果から必要なものを選びます。
動物病院で伝えたいポイント
診察時に経過を正確に共有できるよう、次の情報を整理しておくと役立ちます。
- 飲水量が増えたのはいつからか
- 1日の飲水量と体重
- 尿の回数・量・色
- 食欲が増えたか減ったか
- 体重が増えたか減ったか
- 嘔吐・下痢・元気低下の有無
- 避妊手術の有無と最近の発情時期
- 現在の薬・サプリ
- 食事内容が最近変わったか
同じ「多飲」でも併発症状で考え方が変わる
判断材料を見比べやすいよう、主な違いを表で整理します。
| 一緒にある症状 | 獣医師に伝えたい理由 |
|---|---|
| 体重減少+食欲増加 | 糖尿病などの手がかりになる |
| 食欲低下+嘔吐 | 腎臓病など全身疾患を疑う材料になる |
| パンティング+腹部膨満 | クッシング症候群などの評価材料になる |
| 未避妊+元気低下 | 子宮蓄膿症を除外する必要がある |
| 大量の薄い尿 | 尿濃縮能の評価が重要になる |
これは家庭で診断するための表ではなく、受診時に症状を整理するための目安です。



