犬がおしっこが多い原因は?考えられることと動物病院で伝えたいポイント

犬のおしっこが多い原因は?考えられることと動物病院で伝えたいポイント

犬のおしっこが「多い」と感じたときは、まず1回の尿量が増えているのか、少量を何度もしているのかを分けて考えます。見た目は同じ「回数が増えた」でも、原因や緊急度が異なるからです。

1回ごとの尿量も増え、水を飲む量も増えている場合は、腎臓病、糖尿病、クッシング症候群など全身性の病気が関係することがあります。一方、少量ずつ何度も排尿する場合は、膀胱炎、尿路結石など下部尿路の問題を考えます。

何度も排尿姿勢を取るのにほとんど尿が出ない、血尿がある、排尿時に痛がる場合は、様子を見続けず動物病院へ連絡してください。

最初に確認したい5項目

  • 1回の尿量が多いか、少量を何度もするか
  • 水を飲む量も増えているか
  • 尿の色・におい・血液の混入に変化があるか
  • 食欲・体重・元気に変化があるか
  • 薬を飲んでいるか

「多尿」と「頻尿」は分けて考える

犬のおしっこが増えたと感じた場合、獣医学的には大きく「尿量そのものが増える状態」と「排尿回数が増える状態」に分けて考えます。

多尿|1日の尿量そのものが増える

多尿では、1回の尿量や1日全体の尿量が増えます。多くの場合、体から失う水分が増えるため、水を飲む量も増えます。

糖尿病、腎臓病、クッシング症候群、尿崩症などでみられることがあります。

頻尿|少量を何度もする

頻尿では、1回に出る尿量は少ないのに、何度も排尿姿勢を取ります。膀胱炎、尿路結石、膀胱や尿道の炎症などでみられることがあります。

トイレへ何度も行くため「おしっこの量が増えた」と見えることがありますが、実際には1日の総尿量は増えていない場合があります。

水を飲む量も一緒に確認する

尿量が増えている場合は、飲水量の変化が重要な手掛かりになります。Merck Veterinary Manualでは、腎・尿路疾患の診断時に、飲水量、排尿回数、尿量、尿の見た目、行動変化などの情報が重要とされています。

「いつもより水をよく飲む」と感じたら、可能であれば24時間でどのくらい飲んだか記録します。

飲水量を記録するときの注意

  • 給水器へ入れた量を記録する
  • 24時間後の残量を確認する
  • 複数頭飼育では個別測定が難しい点に注意する
  • ウェットフードや水分の多い食事も考慮する
  • 水を制限して測定しない

水をたくさん飲んでいる犬の水を自己判断で減らさないでください。多尿の背景に病気がある場合、水分制限によって脱水する危険があります。

犬のおしっこが増える主な原因

尿量や回数が増える背景には複数の病気や体の変化があるため、ほかの症状と合わせて考えます。

腎臓病

腎臓は体内の水分量を調整し、尿を濃縮する役割を持っています。腎機能が低下すると、尿を十分に濃くできず、薄い尿を多く出すことがあります。

その結果、水を飲む量が増えることがあります。食欲低下、体重減少、嘔吐、元気低下などを伴う場合もあります。

糖尿病

犬の糖尿病では、血糖値が高くなり、尿中にブドウ糖が出ることで尿量が増えます。Merck Veterinary Manualでは、犬の糖尿病の代表的な徴候として多尿、多飲、食欲増加、体重減少が挙げられています。

「よく食べているのに痩せる」「水をよく飲む」「尿量が増えた」が同時に見られる場合は、受診時にまとめて伝えます。

クッシング症候群

クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)でも、多飲・多尿がみられることがあります。食欲増加、腹部が膨らんで見える、皮膚や被毛の変化などを伴う場合があります。

尿崩症

尿崩症では、抗利尿ホルモンの不足や腎臓側の反応異常によって、大量の薄い尿が出ます。その分を補うために大量の水を飲みます。Merck Veterinary Manualでも、尿崩症では大量の希釈尿と代償性の多飲が特徴とされています。

まれな病気ですが、多尿・多飲の原因を調べる過程で検討されることがあります。

子宮蓄膿症

避妊していない雌犬では、子宮蓄膿症でも水を飲む量や尿量が増えることがあります。元気低下、食欲不振、嘔吐、発熱、陰部からの分泌物などを伴う場合があります。

子宮蓄膿症は緊急性が高くなることがある病気です。未避妊の雌犬で多飲多尿と体調不良がある場合は早めに受診してください。

薬の影響

ステロイド薬や一部の薬では、水を飲む量と尿量が増えることがあります。VCAでも、コルチコステロイドなどが多飲・多尿につながる場合があると説明しています。

服薬中の場合は、薬の名前・量・開始日を動物病院へ伝えます。自己判断で中止しないでください。

少量を何度もする場合は膀胱や尿道の問題も考える

1回の尿量は少ないのにトイレ回数が増えた場合は、膀胱炎や尿路結石などが関係していることがあります。

【下部尿路トラブルで見られやすい変化】

  • 何度も排尿姿勢を取る
  • 少量ずつしか出ない
  • 血尿
  • 排尿時に痛がる
  • 陰部を気にして舐める
  • トイレ以外で排尿する

VCAでは、頻回に排尿姿勢を取るのに尿がほとんど出ない、血尿がある、排尿時に痛がる場合は早急な診察が必要としています。

多尿・頻尿の診察で伝える回数・1回量・飲水量

「おしっこが多い」だけでは、多尿なのか頻尿なのか判断しにくいため、できる範囲で具体的に記録します。

伝えること 記録例
始まった時期 3日前から、1か月前からなど
排尿回数 以前は1日4回、現在は8回など
1回の量 多い、少量、数滴など
飲水量 24時間で測れた量
尿の状態 薄い、濃い、血が混じる、においなど
全身状態 食欲、元気、体重、嘔吐など
薬 薬名、投与量、開始日

Merck Veterinary Manualでも、尿量、頻度、尿の見た目、飲水量、服薬、食欲、体重変化、過去の病歴などは診断に重要な情報とされています。

尿の写真やトイレシーツも情報になる

尿の色や量が普段と違う場合は、可能なら写真を残します。ペットシーツを使っている犬では、1回あたりの広がり方や色の変化も記録しやすいでしょう。

ただし、写真だけで病気を診断することはできません。あくまで診察時の補助情報として使います。

多尿・頻尿で行われる尿検査・血液検査

検査内容は症状や診察結果によって変わりますが、多尿・頻尿では尿検査と血液検査が重要になることがあります。

尿検査

尿の濃さ、糖、たんぱく、血液、炎症細胞、結晶などを確認します。VCAでは、多飲多尿の評価で尿比重や尿糖、赤血球・白血球などの確認が重要とされています。

血液検査

腎機能、血糖値、電解質、肝臓関連の数値などを確認します。尿検査と組み合わせることで、腎臓病や糖尿病、内分泌疾患などを評価しやすくなります。

画像検査・追加検査

必要に応じて、レントゲン、超音波、尿培養、ホルモン検査などが検討されます。すべての犬に同じ検査をするわけではありません。

自宅で水を制限しない

多飲・多尿の犬を見て「水を飲みすぎて尿が増えている」と考え、水を減らしたくなることがあります。しかし、尿量が増える病気では、失った水分を補うために水を飲んでいる場合があります。

獣医師から指示されていない限り、水を自己判断で制限しないでください。Merck Veterinary Manualでも、尿崩症など多尿が起こる病気では自由に水を飲める状態を維持する必要があります。

すぐに受診したいサイン

【早めに動物病院へ相談したい状態】

  • 何度も排尿姿勢を取るのにほとんど出ない
  • 血尿がある
  • 排尿時に痛がる・鳴く
  • 元気や食欲が大きく低下している
  • 嘔吐を伴う
  • 急に水を大量に飲むようになった
  • 急な体重減少がある

特に、尿が出にくい状態は尿路閉塞など緊急性の高い病気につながることがあります。「頻尿だと思っていたら、実際にはほとんど尿が出ていなかった」ということもあるため、1回の尿量まで確認してください。

回数だけでなく1回量と飲水量を確認する

犬のおしっこが多いときは、1回の尿量が増えた多尿なのか、少量を何度もする頻尿なのかを分けて考えることが重要です。

多尿では腎臓病、糖尿病、クッシング症候群、尿崩症など、頻尿では膀胱炎や尿路結石などが原因候補になります。薬の影響や、未避妊の雌犬では子宮蓄膿症なども考慮します。

受診時には、排尿回数、1回量、飲水量、尿の色、体重・食欲・元気、服薬内容を伝えます。

何度も排尿姿勢を取るのに尿が出ない、血尿、排尿時の痛みがある場合は、様子を見続けず早めに動物病院へ連絡してください。

参考:Merck Veterinary Manual「Detecting Disorders of the Kidneys and Urinary Tract in Dogs」「Disorders of Micturition in Dogs and Cats」「Diabetes Mellitus in Dogs and Cats」「Diabetes Insipidus in Animals」、VCA Animal Hospitals「Testing for Increased Thirst and Urination」「Urgent Care for Urinary Concerns」。確認日:2026年10月26日。