犬の血液検査は、病気が疑われるときだけでなく、健康診断、手術や麻酔の前、治療中の経過確認などで行われます。
「何歳になったら必ず受ける」「毎年同じ項目を受ける」と一律に決めるのではなく、年齢、健康状態、症状、服薬、過去の検査結果をもとに検査の時期と項目を決めることが大切です。
血液検査は「健康時の基準値を残す」「症状の原因を探る」「治療や薬の影響を確認する」ために使われます。受診前は、絶食が必要か・水は飲んでよいか・薬をいつ飲ませるかを病院へ確認してください。
犬の血液検査はいつ受ける?
血液検査を受ける代表的なタイミングは、大きく4つあります。
| タイミング | 主な目的 |
|---|---|
| 健康診断 | 症状がない時期の基準値を残し、変化を早めに見つける |
| 体調不良 | 貧血、炎症、血糖、肝臓・腎臓など原因の手掛かりを得る |
| 手術・麻酔前 | 全身状態や麻酔リスクを確認する |
| 治療・服薬中 | 病気の経過や薬の影響を確認する |
健康な犬でも血液検査を受ける意味がある
血液検査は「異常が出てから受ける検査」だけではありません。健康な時期の結果を残しておくと、将来の数値と比較しやすくなります。
AAHAの犬のライフステージガイドラインでは、若い成犬では初期の基準値としてCBCや血液化学検査を検討し、成熟した成犬では年1回、シニア犬では6~12か月ごとの検査を検討する考え方が示されています。
【健康時の検査で役立つこと】
- 愛犬自身の基準となる値を残せる
- 前年との変化を比較できる
- 症状が出る前の異常の手掛かりになることがある
- 年齢に応じた検査項目を見直せる
ただし、血液検査だけですべての病気を見つけられるわけではありません。身体検査、尿検査、便検査、画像検査などと組み合わせて評価します。
シニア犬は検査間隔が短くなることがある
年齢が上がると慢性疾患のリスクが高くなるため、若い犬より短い間隔で検査を提案されることがあります。
AAHAの2023シニアケアガイドラインでは、シニア犬のCBC、血液化学検査、尿検査について、6~12か月ごとが推奨頻度として示されています。
ただし、「7歳になったら必ず半年ごと」と年齢だけで固定するのではなく、犬種、体格、持病、過去の数値などで調整します。
体調に変化があるときは年齢に関係なく検査を検討する
定期健診の時期ではなくても、症状がある場合は血液検査を行うことがあります。
- 食欲が落ちた
- 急に痩せた
- 水を飲む量や尿量が増えた
- 嘔吐・下痢が続く
- 元気がない
- 発熱が疑われる
- 黄疸がある
- ぐったりする
- 出血や貧血が疑われる
症状によっては血液検査だけでなく、尿検査やレントゲン、超音波などを組み合わせます。
手術や麻酔の前に血液検査を行うことがある
去勢・避妊手術、歯科処置、その他の麻酔を伴う処置では、事前に血液検査を行う場合があります。
目的は、貧血や炎症、血糖、肝臓・腎臓など全身状態を確認し、麻酔や処置の計画に役立てることです。
【術前検査で確認したいこと】
- 検査は手術当日か事前日か
- 絶食時間
- 水を飲める時間
- 当日の薬の扱い
- 血液検査以外の検査が必要か
術前検査の項目は、年齢や処置内容、既往歴などによって異なります。
治療中・服薬中は経過確認のために受ける
病気の治療中は、薬が効いているか、病気が改善・悪化していないか、副作用が出ていないかを見るために血液検査を繰り返すことがあります。
糖尿病
血糖値などを確認しながら治療を調整します。
腎臓・肝臓の病気
関連する数値の推移を確認し、治療や食事管理を調整することがあります。
長期服薬
薬によっては、定期的に臓器への影響や血球数などを確認する場合があります。
検査間隔は病気や薬によって異なるため、自己判断で「前回正常だったから今回は不要」と中止しないことが大切です。
血液検査では何を見る?
一般的な血液検査では、主に「血球検査」と「血液化学検査」があります。
血球検査(CBC)
赤血球、白血球、血小板などを調べます。
| 項目 | 確認することの例 |
|---|---|
| 赤血球 | 貧血や脱水の手掛かり |
| 白血球 | 炎症・感染などの手掛かり |
| 血小板 | 出血・凝固に関わる情報 |
血液化学検査
血糖、蛋白、肝臓・腎臓に関連する値、電解質などを確認します。
- 血糖
- ALTなど肝臓に関連する値
- BUN・クレアチニンなど腎臓に関連する値
- 総蛋白・アルブミン
- ナトリウム・カリウムなどの電解質
検査項目は病院のパネルや目的によって異なります。「血液検査」という名称だけで、どこまで調べるのかは分かりません。
「正常範囲内=絶対に健康」ではない
検査結果には基準範囲がありますが、その範囲内ならすべての病気を否定できるわけではありません。
また、基準範囲から少し外れていても、必ず病気とは限りません。年齢、脱水、食事、薬、ストレスなどの影響を受けることがあります。
結果は1回の数値だけでなく、症状・身体検査・過去の結果との変化を合わせて判断します。
受診前に絶食は必要?
検査内容によっては食事の影響を受けるため、絶食を指示されることがあります。
VCAでは一般的な血液検査の準備として、可能であれば採血前約6時間の軽い絶食を案内しています。食後の脂質が検査の解釈を難しくする場合があるためです。
ただし、すべての犬に6時間絶食を自己判断で行うべきという意味ではありません。子犬、糖尿病の犬、投薬中の犬、体調不良の犬などでは扱いが異なる可能性があります。
【予約時に病院へ確認すること】
- 何時間前から食事を止めるか
- 水は飲んでよいか
- 朝の薬を飲ませてよいか
- サプリはどうするか
- 採血前に食べてしまった場合どうするか
水は自己判断で止めない
VCAでは、通常の採血準備では水を飲める状態にしておくことを案内しています。軽い脱水でも検査値に影響することがあるためです。
検査や処置の内容によって特別な指示がある場合は、その指示を優先してください。
薬・サプリは一覧にして持っていく
薬やサプリは検査結果へ影響したり、特定の検査で投与時間が重要になったりすることがあります。
【持参すると役立つ情報】
- 薬の商品名・成分名
- 1回量
- 1日の回数
- 最後に飲ませた時刻
- サプリの商品名
- 療法食・フードの商品名
薬を自己判断で中止してから受診するのではなく、予約時に確認してください。
採血が苦手な犬は事前に伝える
採血は短時間で終わることが多いですが、強い恐怖や興奮がある犬では安全に採血しにくい場合があります。
以前に採血で暴れた、噛もうとした、失神したなどの経験がある場合は、来院前に伝えます。
- 普段使っているハーネスやリードを用意する
- 待合室が苦手なら事前に相談する
- 過去に苦手だった保定方法を伝える
- 必要に応じて病院から事前投薬の指示を受ける
安全のための鎮静や事前投薬が必要かどうかは獣医師が判断します。
結果が出たら「異常値」だけでなく前回との差を聞く
健康診断として血液検査を受ける場合は、今回の結果だけでなく過去の数値との変化も確認します。
- 異常値はどの項目か
- 前回からどの程度変化したか
- 再検査が必要か
- 追加の尿検査・画像検査が必要か
- 食事や薬を変更する必要があるか
- 次はいつ検査するか
AAHAの予防医療資料でも、検査値は一般的な基準範囲だけでなく、その犬自身の過去の値との推移を見ることが重要とされています。
血液検査だけで原因が分からないこともある
血液検査で異常が見つからなくても、症状が続く場合は他の検査が必要になることがあります。
- 尿検査
- 便検査
- レントゲン検査
- 超音波検査
- ホルモン検査
- 感染症検査
逆に、血液検査で異常が見つかった場合も、その数値だけで確定診断できないことがあります。
費用は「血液検査」の名称だけで比較しない
血液検査の料金は、検査項目数、院内検査か外部検査か、診察料が含まれるかなどで変わります。
健康診断の血液検査は、全血球計算や血液生化学検査の項目数など、コースや病院によって内容が異なります。
【料金確認で聞くこと】
- CBCが含まれるか
- 生化学検査は何項目か
- 診察料が別か
- 外部検査費があるか
- 結果説明の再診料が必要か
- 追加検査が必要になった場合の費用
「血液検査○円」だけでは検査範囲が分からないため、内容を確認して比較します。
血液検査は症状が出てからだけではなく、基準値を残すためにも使う
犬の血液検査は、健康診断、症状があるとき、手術・麻酔前、治療中の経過確認などで行われます。
健康な犬でも、過去の数値を残しておくことで将来の変化を比較しやすくなります。シニア犬や持病がある犬では、より短い間隔で検査を勧められることがあります。
受診前は絶食・飲水・薬の扱いを自己判断せず病院へ確認し、結果は1回の数値だけでなく症状や過去の推移と合わせて見てもらうことが大切です。
参考:AAHA「2019 Canine Life Stage Guidelines」「2023 Senior Care Guidelines for Dogs and Cats」、VCA Animal Hospitals「Preparing Your Pet for a Blood Test」。検査内容・頻度・受診前の指示は犬の状態と動物病院によって異なります。


