犬が水を飲まないときは、「どのくらい飲めていないか」だけでなく、食事から取れている水分、元気、食欲、尿、嘔吐・下痢、口の痛みなども一緒に確認します。
ウェットフードを多く食べる犬では器から飲む量が少ないこともあります。一方、普段より明らかに飲まない、水を口にしても吐く、ぐったりする、尿が極端に少ないなどの場合は、脱水や病気の可能性があるため早めの受診が必要です。
「水を飲まない=すぐ同じ量を無理に飲ませる」ではありません。飲めない理由と全身状態を確認し、無理な強制給水で誤嚥させないことが大切です。
犬が水を飲まないときに最初に確認すること
- いつから飲む量が減ったか
- 普段と比べてどの程度減ったか
- ウェットフードなど食事中の水分量
- 元気・食欲
- 嘔吐・下痢の有無
- 尿の回数・量
- 口や喉を痛がっていないか
まず「本当に水分摂取が減っているか」を確認する
器から飲む量だけでは、犬が1日に取っている水分量を正確に判断できません。
ドライフード中心からウェットフード中心へ変えた場合、食事から取れる水分が増え、器から飲む量が減ることがあります。
反対に、ウェットフードからドライフードへ変えた場合は、飲水量が増えることがあります。
可能なら24時間の飲水量を記録する
多頭飼いでなければ、朝に用意した水の量と、追加した量、翌日に残った量を記録すると変化を把握しやすくなります。
飲水量記録のポイント
- 同じ容器で測る
- 継ぎ足した量も記録する
- こぼした水は除外する
- 食事中の水分も意識する
- 尿・食欲・元気も一緒に記録する
Merck Veterinary Manualでは、健康な動物の水分必要量には個体差があり、環境・食事・活動量でも変化するとされています。
水を自由に飲める状態は保つ
水を飲まない理由を確認するために、水を制限したり、飲める場所を減らしたりしないでください。
Merckでは、健康な動物では十分な水へ自由にアクセスできることが基本とされています。
飲水量を測る場合も、「測定のために水を減らす」のではなく、普段どおり自由に飲める状態で記録します。
元気・食欲が落ちていないか確認する
水を飲まないだけでなく、食欲低下、ぐったり、寝てばかりいるなどの変化がある場合は受診の優先度が上がります。
吐き気、痛み、感染症、内臓疾患などで食欲と飲水が同時に落ちることがあります。
嘔吐・下痢がある場合は脱水に注意する
嘔吐や下痢で水分を失っているのに飲水もできない場合、脱水が進みやすくなります。
Merckでは、脱水の確認に口腔粘膜の乾燥、皮膚の張り、眼球のくぼみ、体重変化などが使われます。
脱水を疑う変化
- 歯ぐきが乾いている
- 目がくぼんで見える
- 皮膚の戻りが遅い
- 急に体重が減った
- 元気がない
ただし、高齢犬や痩せた犬では皮膚の張りだけで脱水を正確に判断しにくいため、家庭での確認はあくまで目安です。
水を飲んでも吐く場合は早めに受診する
水を飲むたびに吐く状態では、自宅で飲ませ続けても十分に水分を保てません。
繰り返す嘔吐、腹痛、ぐったり、血の混じる吐物などがある場合は、早めに動物病院へ相談してください。
尿の回数・量を確認する
飲水量が減っているときは、尿量も重要な情報です。
尿が極端に少ない、長時間まったく出ていない、排尿姿勢を取るのに出ない場合は、脱水だけでなく尿路の問題も考える必要があります。
排尿しようとしているのに出ない場合は、飲水量の問題として様子を見ず、早急に動物病院へ相談してください。
口・歯・喉の痛みで飲めないことがある
水へ近づくのに飲まない、口に入れてすぐやめる、飲み込みにくそうな場合は、口腔内や喉の痛みが関係していることがあります。
口の痛みを疑うサイン
- よだれが増えた
- 口臭が強い
- 食べ物を落とす
- 口元を触られるのを嫌がる
- 飲み込む動作を何度もする
- 水を飲むとむせる
口を無理に開けて確認すると、痛みや咬傷につながることがあります。
水容器や水の状態も確認する
体調に問題がなくても、容器の汚れ、場所の変更、におい、温度などで飲み方が変わる犬もいます。
- 水が新鮮か
- 容器が清潔か
- 容器の高さ・深さが飲みにくくないか
- 水飲み場が騒がしくないか
- 首や関節が痛い犬でも飲みやすい高さか
複数の場所に新鮮な水を置くと、飲む機会を増やせることがあります。
食事へ少量の水を加える方法もある
元気があり、吐いておらず、飲み込みにも問題がない犬では、普段のフードへ水を加えることで水分摂取を補える場合があります。
Merckでも、慢性腎臓病などで水分摂取を増やす方法として、ウェットフードを使う、フードへ水を加える、複数の新鮮な水飲み場を用意する方法が示されています。
ただし、療法食を使っている犬や塩分制限が必要な犬では、スープや市販のだしを自己判断で足さず主治医へ確認します。
シリンジで無理に飲ませない
水を飲まないからと、嫌がる犬の口へシリンジで大量の水を入れると、誤嚥する危険があります。
特に、意識が低い、飲み込みにくい、呼吸が苦しい、吐いている犬へ強制給水をしないでください。
子犬は早めに相談する
子犬は成犬より体液量の余裕が少なく、嘔吐・下痢・食欲低下と飲水低下が重なると脱水しやすくなります。
水を飲まないうえに、ぐったり、震え、ふらつき、嘔吐・下痢などがある場合は早めに受診します。
シニア犬・持病がある犬も慎重に見る
高齢犬では、口腔疾患、腎臓病、認知機能の変化、関節痛などが飲水行動へ影響することがあります。
腎臓病などで主治医から水分管理について指示を受けている場合は、飲水量の変化を早めに伝えます。
呼吸が苦しい・意識が悪い場合は緊急
水を飲まないことに加えて、呼吸困難、意識低下、倒れる、非常にぐったりするなどがある場合は緊急性があります。
Merckでは、救急診療で気道・呼吸・循環の安定化が最優先とされ、必要に応じて静脈内輸液などで循環と水分状態を補正します。
家庭で判断しやすい受診目安
| 状態 | 対応の目安 |
|---|---|
| 器からは少ないがウェットフードを食べ、元気・尿も普段どおり | 飲水量と全身状態を記録 |
| 明らかに普段より飲まない状態が続く | 動物病院へ相談 |
| 食欲低下・嘔吐・下痢・元気低下を伴う | 早めに受診 |
| 水を飲んでも吐く・尿が極端に少ない | 早めに受診 |
| 呼吸困難・意識低下・倒れる | 緊急受診 |
受診前に記録しておくこと
- 水を飲まなくなった時期
- 24時間の飲水量
- フードの種類と食事中の水分
- 食欲・元気
- 嘔吐・下痢
- 尿の回数・量
- 体重
- 口・歯・飲み込みの異常
- 現在の薬・持病
原因を詳しく確認したい場合
水を飲まない原因には、食事中の水分量、環境の変化だけでなく、吐き気、口腔の痛み、発熱、腎疾患などさまざまなものがあります。
診療費は脱水の程度と検査内容で変わる
水を飲まない状態で受診した場合、診察だけで済むこともあれば、血液検査、尿検査、点滴、画像検査などが必要になることがあります。
あわせて確認したい関連記事
関連する基礎知識もあわせて確認すると、次に何を確認・準備すべきか整理しやすくなります。
犬が水を飲まないときは「飲水量+全身状態」で判断する
犬が水を飲まないときは、器から飲む量だけでなく、食事に含まれる水分、元気、食欲、嘔吐・下痢、尿、口の痛みを確認します。
元気があり食事から水分を取れている場合は記録しながら観察できることもありますが、明らかな飲水低下が続く、脱水が疑われる、ほかの症状がある場合は早めに相談します。
特に、水を飲んでも吐く、尿が極端に少ない、ぐったりする、呼吸や意識がおかしい場合は、自宅で無理に飲ませるより受診を優先してください。

