犬が下痢をしたときは、便だけを見るのではなく、元気・食欲・水分摂取・嘔吐の有無・下痢の回数・血の有無を一緒に確認することが大切です。
食事の急な変更や拾い食いなど比較的軽い原因で起こることもありますが、寄生虫、感染症、異物、中毒、消化器疾患などでも下痢は起こります。便の色やにおいだけで原因を決めつけないようにしてください。
ぐったりしている、繰り返し吐く、血便や黒いタール状便が出る、強い腹痛がある、誤食・中毒が疑われる場合は、自宅で長く様子を見ず動物病院へ連絡してください。
まず下痢の緊急性を確認する
下痢では水分と電解質が失われます。嘔吐も重なると脱水しやすくなり、特に子犬、高齢犬、持病のある犬では状態が悪化しやすいため注意が必要です。
【早めに動物病院へ連絡したい状態】
- ぐったりして反応が弱い
- 何度も嘔吐している
- 水を飲んでも吐いてしまう
- 血便が多い
- 黒くタール状の便が出る
- 強い腹痛が疑われる
- 立てない、歩けないほど弱っている
- 異物・薬・毒性のある物の誤食が疑われる
- 子犬・高齢犬・持病のある犬で下痢が続く
「元気があるから大丈夫」と決めず、全身状態が悪い場合や血便・黒色便がある場合は早めに受診してください。
下痢のとき自宅で確認したい7つのポイント
受診の緊急度を判断しやすくするため、便だけでなく回数・全身状態・食事や誤食の可能性まで確認します。
1|下痢が何回出ているか
一度だけ軟便が出たのか、短時間に何度も水様便が出ているのかで緊急性は変わります。回数と時刻を記録してください。
2|便の色と状態
軟便、水様便、粘液が多い便、赤い血が混じる便、黒いタール状便など、見た目を記録します。可能であれば写真を撮っておくと受診時に伝えやすくなります。
3|嘔吐があるか
下痢と嘔吐が同時にあると、水分を失いやすくなります。何回吐いたか、水を飲んでも吐くかも確認します。
4|元気と食欲
普段どおり動けているか、呼びかけへの反応はあるか、食べられているかを見ます。ぐったりしている場合は便の状態だけで判断しません。
5|水を飲めているか
下痢では脱水を防ぐための水分摂取が重要です。自分から水を飲めるか、飲んだ後に吐かないかを確認します。
6|直前に食べた物
新しいフード、おやつ、人の食べ物、拾い食い、ゴミ箱の中身など、普段と違う物を食べていないか確認します。
7|薬・予防薬・環境の変化
新しく始めた薬やサプリ、ワクチン、予防薬、旅行、ペットホテル、強いストレスなども受診時に役立つ情報です。
下痢の原因は一つではない
犬の下痢にはさまざまな原因があります。
- 急なフード変更
- 食べ慣れない物や脂肪分の多い物
- 拾い食い・腐敗した物
- 寄生虫
- 細菌・ウイルスなどの感染
- 食物不耐性・食物反応
- ストレス
- 異物
- 中毒
- 炎症性の消化器疾患
- 膵臓・肝臓など消化器以外を含む病気
そのため、「臭いが強いから細菌性」「血があるからこの病気」と便の見た目だけで原因を断定することはできません。
水は基本的に飲める状態を保つ
下痢がある犬では水分が失われるため、水を自由に飲めるようにしておくことが基本です。飲水を制限すると脱水が進む可能性があります。
ただし、水を飲むたびに何度も吐く場合や、飲めないほど弱っている場合は、自宅で水分補給を続けるだけでは不十分なことがあります。動物病院へ連絡してください。
【水分で注意すること】
- 水を飲めているか確認する
- 飲んだ直後に吐かないか見る
- 無理に大量の水を一度に飲ませない
- 脱水が疑われる場合は受診する
食事は「とりあえず絶食」と決めない
以前は下痢や胃腸不調で長時間の絶食を勧める考え方もありましたが、現在はすべての犬に一律で長時間絶食を行う考え方ではありません。
嘔吐がなく、全身状態が良い成犬では、動物病院から消化しやすい食事を少量ずつ与えるよう案内されることがあります。胃腸用療法食などを勧められる場合もあります。
子犬、高齢犬、持病のある犬、低血糖の心配がある犬では、自己判断で長時間食事を抜かないでください。
- 嘔吐があるか
- 食欲があるか
- 子犬・高齢犬・持病のある犬ではないか
- 動物病院から食事指示を受けているか
- 普段のフードへ戻すときは急に全量を変えない
人用の下痢止めを自己判断で使わない
家庭にある人用の下痢止めや整腸薬を、自己判断で犬へ与えるのは避けてください。原因によって必要な治療は異なり、薬の成分や用量が犬に適さないことがあります。
犬用のサプリやプロバイオティクスも、すべての下痢に必要とは限りません。症状が続く場合は、薬やサプリを追加する前に動物病院へ相談します。
誤食が疑われるときは自宅で吐かせない
異物、薬、チョコレート、ぶどう・レーズン、キシリトールを含む物など、犬に危険な物を食べた可能性がある場合は、下痢が出てから様子を見るのではなく、早めに動物病院へ連絡します。
塩やオキシドールなどを使って自宅で吐かせようとしないでください。 食べた物、量、時刻、商品パッケージなどを確認して病院へ伝えます。
便の写真や便検体を用意できると受診時に役立つ
下痢の状態は病院へ着くころには確認できないことがあります。写真を撮っておくと、色・量・形状を伝えやすくなります。
動物病院から便を持参するよう案内された場合は、できるだけ新しい便を清潔な容器や袋へ入れて持参します。採取方法や保存について指示がある場合は、それに従ってください。
下痢について動物病院で伝えたいこと
- 下痢が始まった日時
- 1日に何回出ているか
- 便の色・水分量・血や粘液の有無
- 嘔吐の有無と回数
- 元気・食欲・飲水の状態
- 最近変更したフードやおやつ
- 拾い食い・異物・中毒の可能性
- 薬・サプリ・予防薬
- 旅行・ホテル利用など環境変化
- 同居動物にも同じ症状があるか
「下痢をしています」だけでなく、経過を具体的に伝えることで、必要な検査や治療を判断しやすくなります。
下痢で受診したときに行われる検査
検査内容は犬の状態によって異なります。軽い急性下痢では経過観察や対症管理になる場合もありますが、重症、長引く、繰り返す場合などは追加検査が検討されます。
| 検査 | 確認する目的の例 |
|---|---|
| 便検査 | 寄生虫などの確認 |
| 血液検査 | 脱水、炎症、臓器状態などの評価 |
| 画像検査 | 異物や消化管・腹部臓器の状態確認 |
| 追加検査 | 経過や症状に応じて感染症・慢性疾患などを評価 |
すべての犬にすべての検査が必要なわけではありません。症状と経過から必要性を判断します。
何日まで自宅で様子を見てよい?
「○日なら必ず大丈夫」と一律には決められません。健康な成犬で、下痢が軽く、元気・食欲があり、嘔吐や血便がない場合は、短時間経過を観察できることがあります。
一方で、Merck Veterinary Manualは、血が混じる・悪臭が強く制御できない下痢や黒い便を直ちに受診する目安とし、下痢が24時間以上続く場合も獣医師への相談目安としています。VCAも、頻回の水様便、血便、元気消失、食欲低下、嘔吐を受診目安に挙げています。
【日数より状態を優先】
「まだ1日目だから待つ」ではなく、症状の強さと全身状態で判断してください。 子犬、高齢犬、持病のある犬では特に早めの相談が安全です。
お腹が張る・膨れる場合は別の緊急性も考える
下痢に加えて、お腹が急に膨れる、何度も吐こうとして吐けない、落ち着かない、強く苦しそうにする場合は、単なる胃腸炎とは限りません。
このような変化がある場合は、下痢が治まるかを待たず、すぐに動物病院へ連絡してください。
犬の下痢は便だけでなく全身状態で判断する
犬が下痢をしたら、回数、便の色や状態だけでなく、元気、食欲、飲水、嘔吐、腹痛、誤食の可能性まで確認します。
ぐったりしている、繰り返し吐く、血便・黒色便がある、水を飲めない、強い腹痛や誤食が疑われる場合は、自宅ケアより受診を優先してください。
軽い下痢でも改善しない、繰り返す場合は原因確認が必要です。写真や経過メモを残し、動物病院で具体的に伝えられるよう準備しておきましょう。


