犬が立てないときはどうする?自宅で確認したいことと受診の目安

犬が立てないときはどうする?自宅で確認したいことと受診の目安

犬が急に立てなくなったときは、原則として「様子見」より受診を優先します。痛み、骨折、脊椎・神経の異常、循環不全、低血糖、熱中症、中毒など、すぐに診察が必要な原因が隠れていることがあります。

特に、突然立てない、歩けない、意識がぼんやりする、呼吸が苦しい、強く痛がる、けいれんする、交通事故や落下のあとに立てないといった場合は緊急性が高くなります。

立てない犬を無理に歩かせたり、脚を何度も動かして確認したりせず、まず動物病院へ連絡し、安全に搬送してください。

犬が立てないときに最初に確認すること

  1. 急に立てなくなったのか、徐々に悪化したのか
  2. 意識・反応は普段どおりか
  3. 呼吸は苦しそうではないか
  4. 強い痛み・鳴き声・震えがないか
  5. 前脚・後ろ脚のどちらが動かしにくいか
  6. 交通事故・落下・転倒などの外傷がないか
  7. けいれん・ふらつき・首の傾きなど神経症状がないか

「自力で立てない・歩けない」は救急受診の目安

VCAでは、自力で立つ・歩くことができない状態は救急病院を受診する目安としています。

Merck Veterinary Manualでも、急な歩行不能、動けない状態、虚脱、意識障害などは救急トリアージで優先度の高い状態です。

「立てないけれど少し休めば治るかも」と待つより、急に立てなくなった場合はまず病院へ連絡してください。

意識・反応がおかしくないか確認する

名前を呼んでも反応が弱い、目が合わない、ぼんやりしている、倒れて起きられない場合は、神経系や循環の異常などが疑われます。

Merckでは、意識消失や重度の意識変化は緊急対応が必要な状態とされています。

すぐ受診したい意識の変化

  • 呼びかけへの反応が弱い
  • 起こしてもすぐ倒れる
  • 意識がもうろうとしている
  • 完全に意識がない

呼吸が苦しそうなら最優先で受診する

立てないことに加えて、呼吸が速い・苦しそう、口を開けて呼吸する、舌や歯ぐきが青紫色になる場合は緊急性があります。

Merckでは、救急診療では気道・呼吸・循環を最優先で評価します。

呼吸異常がある犬は、歩かせたり強く抱きしめたりせず、楽な姿勢を保って病院へ向かいます。

強く痛がる場合は無理に触らない

立とうとすると悲鳴を上げる、背中や首を触ると強く痛がる、脚を触ると攻撃的になる場合は、骨・関節・脊椎などの痛みが考えられます。

VCAでは、首や背中を触ると痛がる、強い痛みで歩きたがらない状態は早めの評価が必要としています。

痛みがある犬は普段おとなしくても噛むことがあります。原因を確認しようとして何度も脚や背中を動かさないでください。

交通事故・落下・転倒のあとなら脊椎を動かしすぎない

車との接触、高所からの落下、階段からの転落などのあとに立てない場合は、骨折、脊椎損傷、内出血などが隠れている可能性があります。

Merckでは、外傷を受けた動物を移動するときは頭・首・脊椎の動きを最小限にし、平らで硬い板、厚い段ボール、折りたたんだ毛布などで体を支える方法を案内しています。

前脚か後ろ脚か、全身かを観察する

動かしにくい場所は診察時の手がかりになります。

見え方 確認ポイント
後ろ脚だけ立たない 腰・脊椎・後肢・神経の異常など
前脚も後ろ脚も力が入らない 全身性・神経性の異常など
片脚だけ使わない 外傷・骨折・関節・強い痛みなど
立てるがすぐ崩れる 筋力低下・神経・循環異常など

ただし、家庭で原因を決める必要はありません。どの脚が動かしにくそうかを観察する程度にとどめます。

足先が裏返る・引きずる場合は神経症状の可能性がある

足先が裏返ったまま戻せない、爪の甲側を擦って歩く、後ろ脚を引きずるなどは神経系の異常でみられることがあります。

VCAでも、ふらつき、足先が裏返る「knuckling」、立てない・歩けない状態は救急診療が必要になる神経症状として挙げられています。

けいれん後に立てない場合

けいれん発作の直後は、一時的にふらついたり、立ちにくくなったりすることがあります。

ただし、けいれんが長く続く、短時間に何度も繰り返す、意識が戻らない場合は緊急受診が必要です。

発作中は口へ手を入れず、周囲の危険物を避け、可能なら時間を測ります。

歯ぐきが白い・青紫色なら緊急性が高い

歯ぐきが白っぽい場合は貧血やショック、青紫色・くすんだ色の場合は酸素不足などが疑われます。

Merckでは、救急トリアージで粘膜の色を循環・酸素状態の重要な確認項目としています。

危険な粘膜色

  • 白い・非常に薄い
  • 青紫色
  • 灰色・泥のようなくすんだ色

嘔吐・下痢・大量出血を伴う場合

嘔吐や下痢を繰り返し、脱水や循環不全が進むと、力が入らず立てなくなることがあります。

大量出血がある場合も、ショックにつながる可能性があります。

便や吐物に血が混じる、出血が止まらない、ぐったりして立てない場合は早急に受診します。

子犬では低血糖にも注意する

特に小型犬の子犬では、食事を取れていない状態が続くと低血糖を起こし、ふらつき、震え、反応低下、けいれんなどにつながることがあります。

子犬が食べないうえに立てない・ぐったりしている場合は、自宅で長く様子を見ず病院へ相談してください。

シニア犬でも「年齢のせい」で済ませない

高齢犬では筋力低下や関節疾患で立ち上がりにくくなることがありますが、「昨日まで立てていたのに急に立てない」場合は年齢だけでは説明できません。

脊椎・神経、心臓、内臓疾患、貧血、痛みなども考え、急な変化は受診します。

熱中症で立てなくなる場合もある

暑い環境や運動後に、激しいパンティング、よだれ、ふらつき、嘔吐、ぐったり、虚脱などがある場合は熱中症が疑われます。

Merckでは、熱中症は救急疾患で、協調運動の異常、虚脱、意識消失などがみられることがあります。

涼しい場所へ移し、体を冷やしながら病院へ連絡します。

中毒が疑われる場合はすぐ相談する

人用医薬品、農薬、殺鼠剤、チョコレート、キシリトールなどを食べた可能性があり、ふらつき・震え・けいれん・虚脱がある場合は中毒も考えます。

中毒が疑われるときは、自己判断で吐かせず、何をどの程度摂取した可能性があるかを伝えて動物病院へ連絡してください。

無理に立たせたり歩かせたりしない

「歩けるか確認したい」と何度も立たせると、骨折や脊椎損傷、強い痛みがある場合に悪化させる可能性があります。

VCAでは、自力で立てない・歩けない動物は救急評価を勧めています。

歩行チェックより搬送を優先し、「少しでも歩けるか」を繰り返し試さないでください。

自宅で人用の鎮痛薬を与えない

人用の鎮痛薬の中には犬で中毒を起こすものがあります。

痛そうでも、自己判断で人用薬を使わず、現在飲んでいる薬も含めて獣医師へ確認します。

安全に運ぶ方法

Merckでは、外傷や痛みがある動物を搬送するときは、頭・首・脊椎の動きをできるだけ少なくすることを推奨しています。

搬送のポイント

  • 可能なら2人以上で持ち上げる
  • 厚手の毛布を担架代わりにする
  • 平らな板・厚い段ボールで体を支える
  • 首・背中をねじらない
  • 車内で転がらないよう固定する

大型犬で持ち上げられない場合は、病院へ電話して搬送方法を相談します。

痛みがある犬では咬傷にも注意する

Merckでは、痛みやけががある動物は噛む・引っかく可能性があるため、救助する人の安全確保も重要としています。

ただし、呼吸が苦しい犬や短頭種へ無理に口輪をするのは避けます。

動画は撮れれば役立つが、受診を遅らせない

立とうとしたときの動き、足先の裏返り、ふらつきなどは動画が診断の参考になることがあります。

ただし、撮影のために何度も立たせたり歩かせたりする必要はありません。

受診前に記録すること

  • 最後に普通に歩けた時刻
  • 急に立てなくなったか、徐々に悪化したか
  • 前脚・後ろ脚のどちらが動きにくいか
  • 痛みの有無
  • 意識・呼吸・歯ぐきの色
  • けいれん・嘔吐・下痢の有無
  • 事故・落下・転倒の有無
  • 中毒や誤食の可能性
  • 現在の薬・持病

受診の目安を状態別に整理する

状態 対応
立ち上がりに少し時間がかかるが歩ける 早めに動物病院へ相談
自力で立てない・歩けない 救急受診を検討
強い痛み・外傷を伴う 早急に受診
意識低下・呼吸困難・青紫色の粘膜 緊急受診
けいれん・中毒・熱中症が疑われる 緊急受診

原因について詳しく知りたい場合

犬が立てなくなる原因には、骨・関節・脊椎・神経疾患、循環不全、代謝異常、中毒、熱中症などがあります。

診療費は検査・救急処置の内容で変わる

立てない犬では、診察だけでなく、血液検査、X線、超音波、神経学的検査、CT・MRI、点滴、酸素管理、入院などが必要になる場合があります。

あわせて確認したい関連記事

関連する基礎知識もあわせて確認すると、次に何を確認・準備すべきか整理しやすくなります。

犬が立てないときは「歩けるか試す」より受診を優先する

犬が急に立てなくなったときは、痛み・神経症状・外傷・循環不全・中毒など、緊急性の高い原因が隠れている可能性があります。

自宅では無理に立たせず、意識・呼吸・粘膜色・痛み・外傷の有無を確認し、動物病院へ連絡します。

自力で立てない・歩けない状態そのものが重要な救急サインです。特に意識低下、呼吸困難、強い痛み、外傷、けいれん、中毒・熱中症が疑われる場合は、すぐ受診してください。