犬のフケが増える原因は、皮膚の乾燥だけではありません。アレルギー、寄生虫、細菌・酵母の増殖、角化異常、内分泌疾患などでも、白い粉状のフケや脂っぽい鱗屑が増えることがあります。
Merck Veterinary Manualでは、犬の脂漏症には原発性と二次性があり、原発性脂漏症はまれで、多くは別の病気に伴う二次性脂漏症とされています。
原因を考えるときは「乾いているか脂っぽいか」「かゆみがあるか」「赤み・臭い・脱毛があるか」「全身症状があるか」を分けて見ると整理しやすくなります。
まずフケの「見た目」と分布を確認する
フケが増えたときは、量だけでなく、どのようなフケか、どこに多いかを確認します。
記録したいポイント
- 白く乾いた粉状か
- 脂っぽく皮膚へ付着しているか
- 背中・腰・耳・脇・足先など、どこに多いか
- 全身に広がっているか
- 赤み・かさぶた・脱毛があるか
- 臭いが強くなっていないか
Merckでは、脂漏症の診察でフケの量だけでなく、皮膚の油っぽさ、臭い、毛質、脱毛、赤み、かさぶたなどの分布を確認するとしています。
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症状への対処や受診時の費用もあわせて確認しておくと、原因を絞るまでの流れを整理しやすくなります。
「フケがある=乾燥」と決めつけず、脂っぽさ・臭い・かゆみ・脱毛までセットで見ます。
原因1|皮膚の乾燥・環境変化
室内の乾燥、気温・湿度の変化、洗浄方法などが皮膚の状態へ影響し、フケが目立つことがあります。
環境面で確認すること
- 暖房・冷房を使い始めた時期
- 室内の湿度
- シャンプー頻度
- 新しいシャンプーや保湿剤を使ったか
- すすぎ残しがなかったか
VCAでは、温度・湿度などの環境要因が脂漏症状に関係する場合があるとしています。
ただし、乾燥して見えても感染やアレルギーなど別の原因が重なっている場合があります。
原因2|シャンプーのしすぎ・皮膚に合わないケア
洗浄力が強すぎる製品を頻繁に使ったり、犬の皮膚状態に合わないシャンプーを使ったりすると、皮膚が乾燥・刺激されてフケが増えることがあります。
受診時に伝えたいケア情報
- 商品名
- 使用頻度
- 希釈方法
- 洗浄時間
- 保湿剤の有無
- 使い始めた時期
Merckでは、皮膚が乾燥している犬に強い脱脂作用のある製品を使うと刺激・乾燥が強くなることがあるため、皮膚状態に応じて製品を選ぶ必要があるとしています。
原因3|アレルギー
環境アレルギーや食物アレルギーなどの皮膚炎では、かゆみ・赤み・脱毛に加えてフケが増えることがあります。
アレルギーを考える手掛かり
- 強いかゆみ
- 足先を舐める
- 顔をこする
- 耳を繰り返しかく
- 季節によって悪化する
- 同じ場所に赤みが出る
Merckでは、若い犬で脂漏症状が出た場合、アレルギーが背景にある可能性を考えるとしています。
原因4|細菌・マラセチアなどの二次感染
細菌性皮膚炎やマラセチア(酵母)の増殖では、フケだけでなく、赤み、脂っぽさ、臭い、かゆみ、脱毛、かさぶたなどがみられることがあります。
Merckでは、脂漏症の犬で細菌やマラセチアの二次感染がよくみられ、感染によってかゆみ・炎症・脱毛・フケが強くなることがあるとしています。
感染を疑う手掛かり
- 強い臭い
- 皮膚が脂っぽい
- 赤みが広がる
- ベタつくフケ・かさぶた
- 脱毛
- かゆみが強い
感染の有無は見た目だけで確定できないため、病院では皮膚細胞診などで確認することがあります。
原因5|ノミ・ダニなどの寄生虫
ノミ、疥癬、ニキビダニなどの寄生虫でも、フケ・かゆみ・赤み・脱毛などが起こることがあります。
寄生虫を考える情報
- 予防薬の使用状況
- 最後に予防した時期
- 他の犬・猫との接触
- ドッグラン・ホテル利用
- 家族や他の動物にも皮膚症状があるか
Merckでは、かゆみを伴う脂漏症ではノミ・疥癬などの外部寄生虫を鑑別に含め、皮膚掻爬やノミ取り櫛などを用いて確認するとしています。
原因6|皮膚糸状菌などの真菌感染
皮膚糸状菌症などの真菌感染でも、フケ、脱毛、かさぶた、赤みがみられる場合があります。
人や他の動物へ感染する病気もあるため、円形の脱毛、家族にも皮膚症状があるなどの場合は、その情報を受診時に伝えます。
病院で行われることがある検査
- 被毛の観察
- 真菌培養
- 必要に応じた追加検査
原因7|甲状腺機能低下症などの内分泌疾患
中高齢になってからフケが増え、かゆみがそれほど強くない場合は、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患が背景にあることがあります。
Merckでは、内分泌疾患に伴う皮膚変化として、左右対称の脱毛、フケ・鱗屑、二次性皮膚感染などがみられることがあるとしています。
一緒に伝えたい全身の変化
- 体重が増えた
- 元気・活動量が落ちた
- 寒がる
- 左右対称に毛が薄くなった
- 皮膚が黒ずんだ
皮膚症状だけで内分泌疾患を診断することはできません。必要に応じて血液検査やホルモン検査を行います。
原因8|クッシング症候群など全身性の病気
クッシング症候群などの内分泌疾患でも、脱毛、皮膚の薄さ、色素沈着、脂漏、二次感染などがみられることがあります。
一緒に確認したい症状
- 水をよく飲む
- 尿量が増えた
- 食欲が増えた
- お腹が膨れて見える
- パンティングが増えた
- 筋肉が落ちた
フケだけを見るのではなく、飲水・尿・食欲・体重・体型など全身の変化をセットで記録します。
原因9|栄養状態・食事内容
栄養バランスの偏りや、必要な栄養素を十分に取れていない場合、皮膚・被毛の状態へ影響することがあります。
VCAでは、食事中の栄養バランスの異常も脂漏症状の原因候補に挙げています。
食事で確認すること
- 主食の商品名
- 総合栄養食か
- 1日の給与量
- 手作り食の割合
- おやつ・サプリ
- 直近のフード変更
ただし、フケがあるからと自己判断で脂肪酸やビタミンを大量に追加するのではなく、まず現在の食事全体を確認します。
原因10|原発性脂漏症はあるが「最初からそれ」とは決めない
原発性脂漏症は、皮膚の角化異常によってフケや脂っぽさが増える遺伝性の病気です。
Merckでは、原発性脂漏症はまれで、診断には寄生虫、感染、内分泌疾患など他の原因を除外する必要があるとしています。
原発性脂漏症を疑う前に確認されること
- 皮膚掻爬
- 皮膚細胞診
- 細菌・酵母感染
- 血液検査
- 必要に応じて皮膚生検
「脂漏症」という見た目の説明と、「原発性脂漏症」という診断は同じではありません。
かゆみが強いかどうかで原因の考え方が変わる
| かゆみ | 考える方向 |
|---|---|
| 強い | アレルギー、寄生虫、感染など |
| 弱い・ない | 内分泌疾患、角化異常なども検討 |
Merckでは、強いかゆみがある場合はアレルギーや疥癬、ノミなどを考え、かゆみが少ない場合は内分泌疾患や他の皮膚疾患を検討するとしています。
ただし、もともとかゆみが少ない病気でも二次感染が加わるとかゆみが強くなるため、かゆみの有無だけで病名を決めることはできません。
動物病院ではどんな検査をするのか
フケが増えた犬では、見た目だけで原因を決めず、症状に応じて皮膚検査を組み合わせます。
| 検査 | 確認することの例 |
|---|---|
| 皮膚細胞診 | 細菌・マラセチア・炎症細胞等 |
| 皮膚掻爬 | ニキビダニ・疥癬等 |
| 被毛・真菌検査 | 皮膚糸状菌等 |
| 血液・尿検査 | 全身疾患・内分泌疾患の手掛かり |
| 皮膚生検 | 角化異常など詳細な皮膚評価 |
MerckとVCAでは、皮膚細胞診、皮膚掻爬、被毛検査、培養、血液・尿検査、ホルモン検査、必要に応じて皮膚生検などを組み合わせて原因を絞るとしています。
検査が一つ正常でも「原因なし」とは限らない
皮膚病は、複数の原因が重なっていることがあります。例えば、背景に内分泌疾患があり、その上に細菌・マラセチア感染が起こっているケースもあります。
検査結果を聞くときの3点
- 今回確認できたこと
- まだ否定できない原因
- 次の検査が必要になる条件
「この検査が陰性だったから全部問題なし」と考えず、症状が続く・再発する場合は再評価が必要です。
受診時はシャンプー・薬・予防歴まで伝える
動物病院で伝えたい情報
- いつからフケが増えたか
- 乾いたフケか脂っぽいか
- かゆみ・臭い・赤み・脱毛
- シャンプー名と頻度
- ノミ・ダニ予防の状況
- フード・おやつ・サプリ
- 現在使っている薬
- 飲水・尿・食欲・体重の変化
「昨日から」だけでなく、「1週間前から背中に白い粉状のフケが増え、3日前からかゆみが強くなった」のように時系列で伝えると整理しやすくなります。
受診前にシャンプーや薬を次々変えない
フケが気になるからと、シャンプーを頻繁に変える、複数の保湿剤・サプリを同時に追加する、人用の薬を塗ると、原因や治療反応を判断しにくくなることがあります。
受診前に避けたいこと
- 洗浄回数を急に増やす
- 複数の薬用シャンプーを自己判断で併用する
- 人用の皮膚薬を塗る
- サプリを一度に複数追加する
- フードを短期間で何度も変更する
すでに変更したものがあれば、商品名・開始日・使用量を病院へ伝えます。
原因探しより受診を優先したい状態
早めに相談したい変化
- 赤み・ただれが広がる
- 強いかゆみで眠れない
- 皮膚から出血・膿が出る
- 強い悪臭がある
- 急に脱毛が広がる
- 元気・食欲が落ちる
- 水を飲む量・尿量が変わる
フケだけなら緊急性が低いこともありますが、強い炎症・感染や全身症状を伴う場合は、原因を自宅で探し続けず受診します。
特に、フケに強いかゆみ・赤み・臭い・脱毛・全身状態の変化が加わっている場合は、「乾燥」と決めつけないことが大切です。
再診では「フケの量」以外の変化も伝える
治療後に記録すること
- フケの量
- かゆみの強さ
- 臭い
- 赤み
- 脱毛範囲
- シャンプー後の変化
- 薬を始めた日
Merckでは、二次感染を治療したあとに隠れていた基礎疾患が見つかることもあるため、症状が改善しても必要な再診を受けることが重要とされています。


