犬がご飯を食べないときは、まず「食欲だけが落ちているのか」「ほかの症状もあるのか」を確認します。一時的な食欲低下で元気や水分摂取に問題がないこともありますが、口の痛み、消化器の病気、全身性の病気、ストレス、誤食などが関係している場合もあります。
特に、繰り返す嘔吐・下痢、強い元気消失、腹痛、呼吸異常、水も飲めない、誤食や中毒の可能性がある場合は、食事を工夫して様子を見るより受診を優先します。
「何時間食べなければ受診」と時間だけで決めず、年齢・持病・飲水・元気・嘔吐や下痢・痛み・誤食の可能性を合わせて判断することが大切です。
自宅で最初に確認したいこと
犬がご飯を食べないときは、フードだけを見ず、普段との違いを順番に確認します。
- 水は飲めているか
- 元気はあるか
- 嘔吐・下痢はないか
- 口や歯を痛がっていないか
- お腹を痛がっていないか
- 誤食・中毒の可能性がないか
- いつから、どの程度食べていないか
水は飲めているか確認する
食欲が落ちていても、水を普段どおり飲めているかは重要な確認ポイントです。
水も飲めない、飲んでも吐く、明らかに飲水量が減っている場合は、脱水につながる可能性があります。
食べないことに加えて水分も取れない場合は、自宅で長く様子を見ず動物病院へ相談してください。
元気・反応・歩き方を見る
散歩に行きたがるか、呼びかけへの反応は普段どおりか、自力で立てるかなどを確認します。
少し食欲が落ちても元気に動いている場合と、ぐったりして立てない場合では緊急性が違います。
起こしても反応が弱い、立てない、歩けないなどの状態は緊急性があります。
嘔吐や下痢がないか確認する
食欲低下に嘔吐や下痢が加わる場合は、胃腸炎だけでなく、異物、膵炎、感染症、全身疾患などさまざまな原因が考えられます。
VCAでは、食欲不振に嘔吐や下痢、元気消失、腹痛、脱水などが伴う場合は、早めの診察が必要としています。
早めに相談したい組み合わせ
- 食べない+繰り返し吐く
- 食べない+水様便が続く
- 食べない+血便・吐血
- 食べない+ぐったり
- 食べない+腹痛
食べたそうなのに食べられない場合は口の痛みも考える
食欲がないように見えても、実際には「食べたいのに口へ入れられない」「噛めない」「飲み込みにくい」ことがあります。
VCAでは、こうした状態を食欲そのものがない状態と区別して考えることがあります。
口の違和感を疑うサイン
- 食べ物へ近づくが途中でやめる
- 口へ入れても落とす
- 片側だけで噛むように見える
- よだれが増えた
- 口臭が急に強くなった
- 口元を触られるのを嫌がる
口の中を無理に開けて確認すると、痛みや咬傷事故につながることがあります。食べ方の変化を動画で残し、診察時に見せる方法もあります。
お腹を痛がっていないか確認する
祈るように前脚を伸ばしてお尻を上げる、背中を丸める、腹部を触られるのを嫌がる、落ち着かないなどは、腹部の痛みでみられることがあります。
強い腹痛がある場合は、自宅で食べさせようとせず受診します。
誤食・異物・中毒の可能性を確認する
おもちゃ、布、骨、串、薬、チョコレート、玉ねぎなど、食べてはいけないものを口にした可能性がないか確認します。
誤食の可能性がある場合は、「食べないだけだから」と待たず、何を・いつ・どれくらい食べた可能性があるかを伝えて動物病院へ相談します。
自己判断で吐かせたり、人用の薬を飲ませたりしないでください。
フードを変えた直後ではないか確認する
急なフード変更で食べなくなる犬もいます。
新しい味や香りに慣れていないだけの場合もありますが、切り替え後に嘔吐や下痢も出ている場合は、単なる好き嫌いと決めつけないようにします。
おやつ・人の食べ物を食べすぎていないか確認する
主食だけ食べない場合は、おやつや人の食べ物で満腹になっていないかも確認します。
「ご飯は食べないが好きな物だけ食べる」状態でも、口の痛みや吐き気などが隠れていることがあります。
好きな物を食べるから病気ではない、と断定しないことが大切です。
環境の変化やストレスも確認する
引っ越し、来客、留守番時間の変化、雷・工事音、新しい家族や動物などがきっかけで、一時的に食欲が落ちることがあります。
ただし、ストレスと思っていても病気が隠れていることがあるため、食欲低下が続く場合は受診します。
暑さで食欲が落ちていても体調を確認する
気温が高い時期に食欲が落ちる犬もいますが、熱中症や脱水が関係することもあります。
激しいパンティング、ぐったり、ふらつき、嘔吐などがある場合は緊急性があります。
子犬が食べないときは早めに相談する
子犬は成犬より体力やエネルギーの余裕が少なく、特に小型犬の子犬では低血糖などへの注意が必要です。
食べないことに加えて、震え、ふらつき、元気消失などがある場合は、早めに動物病院へ相談してください。
シニア犬が食べないときも「年齢のせい」にしない
高齢犬では、歯の痛み、腎臓病、肝臓病、腫瘍、認知機能の変化、薬の副作用など、食欲が落ちる理由が増えます。
「年を取ったから食が細くなった」と決めつけず、体重減少や飲水量の変化も合わせて確認します。
持病がある犬は受診判断を早める
糖尿病、腎臓病、心臓病、肝臓病などの持病がある犬では、食事が取れないことが治療計画へ影響する場合があります。
特に、食事と薬・インスリンのタイミングが関係する病気では、自己判断でいつもどおり投薬せず、主治医へ確認してください。
「12時間」を絶対基準にしない
VCAの緊急診療案内では、12時間以上食べていないことを受診の目安の一つとしています。
ただし、これはすべての犬に共通する絶対基準ではありません。
子犬、シニア犬、持病がある犬、嘔吐・下痢・痛み・誤食などを伴う犬では、12時間を待たずに相談すべき場合があります。
時間より症状を優先し、「食べない+ほかの異常」がある場合は早めに相談してください。
無理に食べさせない方がよい場合がある
吐いている、強い腹痛がある、飲み込みにくそう、誤食が疑われるなどの場合は、自己判断で大量に食べさせないようにします。
シリンジなどで無理に口へ入れると、誤嚥につながることがあります。
食べさせ方を工夫する前に、原因確認が必要な状態ではないかを判断します。
元気があり軽い食欲低下だけなら食事環境を確認する
ほかの症状がなく元気がある場合は、次のような点を確認できます。
- フードが古くなっていないか
- 保存方法に問題がないか
- 食器が汚れていないか
- 食事場所が落ち着かない環境ではないか
- 急にフードを変更していないか
ただし、食欲低下が続く場合は、食事環境だけの問題と決めつけません。
トッピングだけで何日も様子を見ない
食べないたびに肉やチーズなどを追加すると、主食をさらに食べなくなることがあります。
また、病気による食欲低下でも一時的に嗜好性の高い物だけ食べる場合があります。
トッピングで食べたから受診不要、とは判断できません。
受診前に記録しておくこと
- 最後に普段どおり食べた時間
- 実際に食べた量
- 水を飲んだ量・回数の変化
- 嘔吐・下痢の有無と回数
- 便・尿の変化
- 元気・歩き方
- 誤食の可能性
- 現在の薬・サプリ
- 最近変更したフード・おやつ
食べ方、歩き方、嘔吐物や便などは、可能なら写真・動画で残すと診察の参考になります。
受診の目安を状態別に整理
| 状態 | 対応の目安 |
|---|---|
| 少し食欲が落ちたが元気・飲水は普段どおり | 食事、水、便、元気を観察 |
| 食欲低下が続く | 動物病院へ相談 |
| 嘔吐・下痢・元気消失・痛みを伴う | 早めに受診 |
| 水も飲めない、呼吸困難、意識異常、強い痛み、中毒・異物の疑い | 緊急対応を検討 |
判断に迷う場合は、年齢、持病、食べていない時間、ほかの症状を伝えて動物病院へ電話相談する方法もあります。
原因について詳しく知りたい場合
食欲低下の原因は、口腔疾患、消化器疾患、内臓疾患、感染症、痛み、ストレスなど幅広くあります。
原因別の整理は、次の記事で詳しく確認できます。
あわせて確認したい関連記事
関連する基礎知識もあわせて確認すると、次に何を確認・準備すべきか整理しやすくなります。
診察・検査費も事前に把握しておく
食欲不振で受診した場合は、診察だけでなく、症状に応じて血液検査、画像検査、便検査などが必要になることがあります。
費用の内訳や見積もりの考え方は、診療費の記事で確認できます。

