犬が涙が多いときはどうする?自宅で確認したいことと受診の目安

犬の涙が多いときはどうする?自宅で確認したいことと受診の目安

犬の涙が多いときは、単なる「涙やけ」だけでなく、目の刺激、異物、結膜炎、まぶたやまつ毛の異常、角膜の傷、涙の通り道の問題などが関係していることがあります。

まず確認したいのは、片目だけか両目か、目を細めていないか、赤み・濁り・目やに・こする動きがないかです。涙が多いという症状だけで原因を決めることはできません。

 

目を開けにくい、強く細める、白く・青く濁る、急に見えにくそう、目を強くこする場合は、涙やけのケアより先に動物病院へ連絡してください。

最初に「片目だけか両目か」を確認する

涙が多いと気づいたら、左右を見比べます。片目だけ急に涙が増えた場合と、両目で以前から続いている場合では、考えられる原因の範囲が異なります。

確認すること 見方
左右差 片目だけか、両目か
始まり方 急に増えたか、以前から続いているか
涙の量 目の下が湿る程度か、涙が流れ落ちるか
目の開き方 左右で同じか、片目を細めていないか

片目だけの急な変化では、異物や外傷など局所的な問題も考えます。両目で続く場合でも、アレルギーや涙の排出経路、顔の形などさまざまな要因があり、左右差だけで原因を断定することはできません。

涙が多いときに自宅で確認したい7項目

涙の量だけでなく、痛みや目の見た目、左右差などを順に確認すると、受診時に変化を伝えやすくなります。

1.目を細めていないか

目を半分閉じる、まばたきが増える、片目だけ開けにくそうにするなどは、眼の痛みや不快感でみられることがあります。

ACVO(米国獣医眼科学会)は、赤み、目を細める、第三眼瞼が出る、涙が増える、目をこするなどを眼の不快感のサインとして挙げています。

2.白目が赤くないか

結膜の赤みが強い場合は、炎症や刺激が起きている可能性があります。赤みと涙が同時に増えている場合は、単なる涙やけとして長く様子を見ないようにします。

3.黒目が濁っていないか

角膜が白っぽい、青っぽい、曇って見える場合は、角膜の病気や緑内障などが関係することがあります。

Merck Veterinary Manualでは、角膜潰瘍で痛みと流涙がみられることがあり、急性緑内障などの眼科救急では迅速な評価が必要とされています。

【早めの受診を優先したい目の変化】

  • 目を開けられない、強く細める
  • 黒目が白い・青い・曇っている
  • 急に目が赤くなった
  • 目を強くこすり続ける
  • 目の形や大きさが左右で急に違う
  • 急に見えにくそうにする

4.目やにの量と色

涙だけでなく、目やにが増えていないかも確認します。透明に近いものだけでなく、粘りが強い、黄色や緑色に見えるなど変化がある場合は記録します。

涙と目やには別の症状ですが、同時に起きることがあります。

5.目をこする・顔を床へ押し付ける動き

前足で目をこする、顔を床や家具へこすりつける場合は、かゆみや痛み、異物感などが考えられます。

こすり続けると角膜を傷つける可能性があるため、行動だけを止めて原因を放置しないことが大切です。

6.毛や異物が目に当たっていないか

目の周りの毛、砂、草、小さな異物などが刺激になり、涙が増えることがあります。

ただし、眼球に付着した異物をピンセットなどで取ろうとしたり、まぶたの裏まで無理に触ったりしないでください。角膜異物は眼科救急になることがあります。

7.目の下の皮膚が赤くなっていないか

涙が長く続くと、目の下が常に湿り、被毛の変色や皮膚刺激につながることがあります。

VCAでは、流涙(epiphora)で目の下の湿り、赤褐色の被毛変色、臭い、皮膚刺激・感染などがみられることがあるとしています。

涙が増える主な原因

涙が多くなる理由は、大きく「涙が増えている」「涙がうまく流れない」の2方向で考えると分かりやすくなります。

目への刺激で涙が増える

異物、角膜の傷、結膜の炎症、まつ毛やまぶたの異常などで眼表面が刺激されると、涙が増えることがあります。

VCAは流涙の原因として、結膜炎、アレルギー、眼のけが、異常なまつ毛、角膜潰瘍、感染、眼瞼の形態異常、緑内障などを挙げています。

涙の排出がうまくいかない

涙は通常、目頭付近の涙点から鼻涙管を通って排出されます。この通り道が狭い、詰まる、周囲に炎症があるなどの場合、涙が目からあふれることがあります。

Merck Veterinary Manualでも、鼻涙管などの異常は過剰な流涙につながり、先天的なもののほか、感染、異物、外傷などが原因になることがあると説明しています。

顔の形やまぶた・毛の影響

顔の形によって涙が目の外へ流れやすい犬や、目の周囲の毛が刺激になる犬もいます。

ただし、犬種や顔つきだけを理由に「体質だから仕方ない」と決めつけるのは避けます。新しく涙が増えた場合や痛みのサインがある場合は、別の原因がないか確認が必要です。

自宅でできるのは「清潔にすること」と「記録」

原因が分からない段階では、治そうとしてさまざまなケア用品を試すより、目の周囲を清潔に保ち、変化を記録します。

目の周囲の涙をやさしく拭く

目の下が濡れている場合は、眼球をこすらず、目の周囲をやさしく拭きます。汚れが固まっている場合も無理に剥がさないようにします。

濡れたままにしない

涙で皮膚が長時間湿っている場合は、やさしく水分を取ります。

写真を撮る

左右の目が分かる写真を残すと、赤みや涙の量が増えているか比較しやすくなります。

記録しておくとよいこと

  • いつから涙が増えたか
  • 片目か両目か
  • 目を細める・こする動き
  • 赤みや濁り
  • 目やにの色・量
  • 散歩やシャンプー後など発生前の出来事
  • 使っている目薬や薬

涙が多い犬に自宅で避けたい対応

【自己判断で行わないこと】

  • 人用の目薬を使う
  • 以前もらった目薬を再使用する
  • 別の犬に処方された薬を使う
  • 眼球へ消毒液を使う
  • 目に刺さった異物を無理に取る
  • 涙やけ用品を眼球近くへ大量に使う

特に、以前処方された眼薬でも現在の病気に適しているとは限りません。角膜の状態などによって使えない薬もあるため、受診前に自己判断で再開しないでください。

VCAも、過酸化水素を含む製品などを目の近くに使用すると眼を傷つけるおそれがあるため避けるよう案内しています。

どのくらいなら様子を見てよい?

「涙が多いけれど何日待てるか」は、涙の量だけでは決められません。

一時的に軽く涙が増え、目を普通に開けていて、赤み・濁り・痛み・異常な目やにがなく、短時間で元に戻る場合は経過を観察できることがあります。

一方、次の状態では長く様子を見ない方が安全です。

  • 涙が増えた状態が続く
  • 何度も繰り返す
  • 片目だけ急に増えた
  • 赤みや目やにを伴う
  • 目をこする・細める
  • 目の下の皮膚が荒れている

眼の病気には短時間で悪化し、視力へ影響するものもあります。「涙だけだから」と一律に数日待つ基準は作らない方が安全です。

すぐに動物病院へ連絡したい症状

次のような状態では、涙やけの清掃や写真記録より受診を優先します。

【受診を急ぎたいサイン】

  • 目を開けられない、強く細めている
  • 角膜が白い・青い・濁っている
  • 目を強くこすり続ける
  • 眼球に傷や異物が見える
  • 目が飛び出している、形が急に変わった
  • 急に見えにくそうにする
  • 強い赤みや腫れがある

Merck Veterinary Manualでは、角膜異物・裂傷、深い角膜潰瘍、急性緑内障、急な視力低下などを眼科救急として挙げています。

涙の増加について動物病院で伝えたいこと

診察では「涙が多い」だけでなく、症状の始まりと伴う変化を具体的に伝えます。

【診察前に整理する情報】

  • いつから涙が増えたか
  • 片目か両目か
  • 急に始まったか徐々に増えたか
  • 目を細める・こするか
  • 赤み・濁りがあるか
  • 目やにの色と量
  • 散歩中の草・砂・枝などとの接触
  • シャンプーや新しいケア用品を使ったか
  • 現在使っている目薬・薬
  • 過去に目の病気があったか

動物病院ではどんな検査をする?

必要な検査は症状によって異なります。

眼の表面とまぶたの確認

角膜、結膜、まぶた、まつ毛などに刺激や異常がないか確認します。

フルオレセイン染色

角膜の傷・潰瘍を調べるため、色素を使った検査が行われることがあります。また、涙の排出が行われているかを見る際に使われる場合もあります。

涙の量を測る検査

涙の量そのものに異常がないかを確認するため、涙液量を測定する検査が行われることがあります。

眼圧検査

緑内障などが疑われる場合は、眼圧を測定します。ACVOでは、緑内障の診断に眼圧測定(tonometry)を用いると説明しています。

 

「涙が多い=涙の量だけを測る」とは限りません。角膜の傷、眼圧、涙の排出経路など、症状に応じて必要な検査を組み合わせます。

涙やけだけに見えても原因確認が先

目の下の被毛が赤茶色になる「涙やけ」は見た目の問題として気づきやすい一方、涙があふれる原因が隠れていることがあります。

VCAは、流涙では涙の排出不良だけでなく、結膜炎、アレルギー、外傷、異常なまつ毛、角膜潰瘍、緑内障などによる涙の増加も確認するとしています。

そのため、色を落とすケアだけを続けるのではなく、急に始まった・悪化した・痛みがある場合は原因を確認することが重要です。

涙が多いときは「量」より目の痛みと見た目の変化を見る

犬の涙が多いときは、片目か両目か、いつから始まったかを確認し、目を細める、こする、赤い、濁る、目やにが増えるなどの変化を一緒に見ます。

自宅でできるのは、目の周囲をやさしく清潔に保ち、症状を記録することです。人用の目薬や以前の処方薬を自己判断で使用しないでください。

 

目を開けられない、強く細める、濁る、急に見えにくそう、強くこする場合は、涙やけケアより動物病院への連絡を優先しましょう。

参考:VCA Animal Hospitals「Eye Discharge (Epiphora) in Dogs」、Merck Veterinary Manual「Disorders of the Nasal Cavity and Tear Ducts in Dogs」「Disorders of the Cornea in Dogs」「Overview of Ophthalmic Emergencies in Small Animals」、American College of Veterinary Ophthalmologists「Signs of Ocular Discomfort in Your Pet」「Glaucoma in Dogs」。