犬の毛が抜けているときは、まず換毛の範囲なのか、皮膚が見えるほどの脱毛なのかを確認してください。
季節の変わり目に毛が抜けるのは自然なこともありますが、円形・まだら・左右対称に毛が抜ける、かゆみや赤みを伴う、皮膚がにおう、フケやかさぶたが増える場合は、皮膚病や全身疾患が隠れていることがあります。
「毛が抜ける量」だけではなく、脱毛の場所・形・皮膚の状態・かゆみ・全身状態を一緒に確認することが大切です。
まず「抜け毛」と「脱毛斑」を分ける
Merck Veterinary Manualでは、自然な換毛では古い毛が抜けても、通常は明らかな脱毛斑ができないとされています。
| 見え方 | 考え方 |
|---|---|
| 全体的に毛が抜けるが地肌は目立たない | 自然な換毛の可能性 |
| 一部だけ地肌が見える | 局所的な脱毛として確認 |
| 左右対称に薄くなる | ホルモン疾患なども含めて確認 |
| 赤み・かゆみを伴う | 炎症、感染、寄生虫、アレルギーなどを確認 |
地肌がはっきり見える部分がある場合は、単なる抜け毛として扱わないようにします。
脱毛している場所を確認する
脱毛の場所は、原因を考える手がかりになります。
- 顔・目の周囲
- 耳
- 首・背中
- 脇・お腹
- 足先
- 尾
- 左右対称か片側だけか
写真を撮るときは、全身で位置が分かる写真と、患部に近づいた写真を1枚ずつ残すと変化を比較しやすくなります。
かゆみがあるか確認する
Merck Veterinary Manualでは、脱毛に強いかゆみを伴う場合、まずかゆみの原因を調べることが重要とされています。
犬が次の行動をしていないか確認してください。
- 後ろ足で繰り返し掻く
- 同じ場所を舐め続ける
- 毛を噛む
- 床や家具へ体をこすりつける
- 眠れないほど掻く
かゆみが強いと、病気そのものだけでなく、掻く・舐める行動によって毛が切れたり抜けたりすることがあります。
赤み・フケ・かさぶた・においを確認する
脱毛部分の皮膚も確認します。
- 赤い
- フケが増えている
- かさぶたがある
- ジュクジュクしている
- 膿や液体が出ている
- 皮膚が黒く厚くなっている
- 普段と違うにおいがある
Merck Veterinary Manualでは、皮膚炎に伴う変化として、かゆみ、赤み、フケ・鱗屑、皮膚の肥厚、色素沈着、におい、脱毛などがみられるとされています。
赤み・膿・強いにおい・痛みがある場合は、家庭でシャンプーを繰り返すより受診を優先してください。
ノミ・ダニなどの寄生虫も確認する
ノミやダニなどの外部寄生虫は、かゆみや脱毛の原因になります。
Merck Veterinary Manualでは、かゆみを伴う脱毛の原因として寄生虫、感染症、アレルギーなどが挙げられています。
予防薬を使っている場合は、商品名と最後に使用した日を記録します。
皮膚に何か付着していても、正体が分からない場合は無理に引き抜かず動物病院へ相談してください。
輪のような脱毛やフケがある場合は感染症も考える
真菌感染などでは、局所的な脱毛やフケ、皮膚の変化がみられることがあります。
Merck Veterinary Manualでは、細菌・真菌・寄生虫感染が毛包や毛幹を傷つけ、脱毛を起こすことがあるとされています。
感染症の種類によっては他の動物や人への配慮が必要な場合もあるため、自己判断で「ただの乾燥」と決めつけないようにします。
左右対称の脱毛ではホルモン疾患も確認する
かゆみが目立たず、胴体や尾などで左右対称に毛が薄くなる場合は、内分泌疾患が原因になることがあります。
Merck Veterinary Manualでは、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症などで、左右対称の脱毛がみられることがあるとされています。
- 水を飲む量が増えた
- 尿量が増えた
- 食欲が大きく変わった
- 体重が増減した
- 元気が低下した
- お腹が膨れて見える
こうした全身症状も一緒に伝えると診断の助けになります。
首輪・ハーネスの摩擦で局所的に毛が薄くなることもある
Merck Veterinary Manualでは、合っていない首輪などの摩擦でも局所的な脱毛が起こることがあるとされています。
首輪・ハーネスが当たる場所だけ毛が薄い場合は、サイズやこすれを確認します。
ただし、赤み・痛み・ジュクジュクがある場合は、単なる摩擦と決めつけず受診してください。
シャンプーやブラッシングをやりすぎない
抜け毛が多いと、強くブラッシングしたり頻繁にシャンプーしたくなりますが、皮膚に炎症がある場合は刺激を増やすことがあります。
- 毛を強く引っ張らない
- 毛玉を無理にほどかない
- 同じ日に何度も洗わない
- 人用シャンプーを使わない
ブラッシングは皮膚を傷つけない範囲で行い、脱毛部分は特にやさしく扱います。
人用の育毛剤・皮膚薬を使わない
人用の育毛剤、ステロイド外用薬、抗真菌薬、消毒薬などを自己判断で塗らないでください。
犬が舐めてしまう可能性があり、脱毛の原因によって適切な治療も異なります。
以前処方された犬用の皮膚薬が残っていても、今回の脱毛へ自己判断で再利用せず獣医師へ確認します。
食事を急に大きく変えない
被毛の異常を見て、すぐにフードやサプリを一度に変更すると、何が影響したか分かりにくくなることがあります。
Merck Veterinary Manualでは、栄養不足が脱毛に関係することはありますが、感染、寄生虫、アレルギー、ホルモン異常など原因は多岐にわたります。
完全栄養食を適切量食べている犬で脱毛がある場合は、まず原因を確認することを優先します。
写真と体重を記録する
脱毛は少しずつ広がる場合があるため、同じ条件で記録します。
- 脱毛に気づいた日
- 最初に見つけた場所
- 広がった範囲
- かゆみの有無
- 赤み・フケ・におい
- 体重の変化
- 使用中の薬・予防薬
受診を急いだ方がよいサイン
- 急速に脱毛範囲が広がる
- 強いかゆみで皮膚を傷つけている
- 膿・出血・ジュクジュクがある
- 皮膚が強く腫れて痛がる
- 顔が腫れる・じんましんが出る
- 呼吸が苦しい
- 元気・食欲も落ちている
- 発熱が疑われる
脱毛そのものが救急ではない場合でも、呼吸困難、急な顔の腫れ、強い全身症状がある場合は緊急度が上がります。
緊急でなくても脱毛斑があるなら相談する
自然な換毛では明らかな脱毛斑ができないことが多いため、地肌が見える場所ができた場合は受診相談を考えます。
Merck Veterinary Manualでは、脱毛の原因を調べる際に、脱毛の分布、かゆみ、感染所見、全身状態などを確認するとしています。
動物病院へ伝えると役立つこと
| 項目 | 伝える内容 |
|---|---|
| 開始時期 | いつから毛が抜けたか |
| 分布 | 局所、複数箇所、左右対称、全身 |
| 皮膚 | 赤み、フケ、かさぶた、におい |
| かゆみ | 掻く、舐める、噛む頻度 |
| 全身状態 | 食欲、元気、体重、飲水・排尿 |
| 背景 | 薬、予防薬、シャンプー、食事変更 |
病院ではどんな検査が検討される?
脱毛の原因を調べるため、皮膚と被毛の観察に加えて、症状に応じて次のような検査が行われます。
- 皮膚掻爬検査
- ノミ・ダニなどの確認
- 皮膚細胞診
- 真菌検査
- 被毛の顕微鏡検査
- 必要に応じて皮膚生検
- 内分泌疾患が疑われる場合の血液・尿検査
Merck Veterinary Manualでも、脱毛の診断では皮膚掻爬、被毛の検査、細胞診、真菌検査、必要に応じて皮膚生検や内分泌検査などが使われるとされています。
原因を詳しく知りたい場合
脱毛の原因には、自然な換毛、皮膚炎、感染症、寄生虫、アレルギー、ホルモン疾患などがあります。
診療費を確認したい場合
フケも増えている場合
脱毛に加えてフケが目立つ場合は、皮膚の乾燥だけでなく炎症・感染なども確認します。
あわせて確認したい関連記事
関連する基礎知識もあわせて確認すると、次に何を確認・準備すべきか整理しやすくなります。
自宅で確認するチェックリスト
- 地肌が見える脱毛斑があるか確認した
- 局所・左右対称・全身のどれか確認した
- かゆみ・舐める・噛む行動を確認した
- 赤み・フケ・かさぶた・においを確認した
- 予防薬の使用状況を確認した
- 食欲・元気・体重・飲水排尿を確認した
- 首輪・ハーネスの摩擦を確認した
- 強いブラッシング・洗いすぎを避けた
- 人用の薬を塗っていない
- 広がる・繰り返す場合は受診する
犬の毛が抜けるときは、まず自然な換毛なのか、明らかな脱毛斑があるのかを確認します。
地肌が見える、左右対称に毛が薄くなる、かゆみ・赤み・フケ・におい・ジュクジュクを伴う場合は、単なる換毛と決めつけず動物病院へ相談してください。
脱毛はそれ自体が病名ではなく、感染、寄生虫、アレルギー、摩擦、ホルモン異常などさまざまな原因で起こります。
自宅では病名を当てるより、いつから・どこが・どのように抜けたか、皮膚とかゆみ、全身状態を記録して診察につなげることが大切です。


