犬の呼吸が速いときは、まず運動直後や暑い場所でのパンティングなのか、安静にしているのに速いのかを分けて確認します。
犬は暑さ・運動・興奮・不安などでも呼吸が速くなります。一方、安静時や睡眠中にも呼吸数が増えている場合は、心臓・肺・胸腔の病気、痛み、発熱、貧血などが関係していることがあります。
呼吸数の数字だけでなく、「呼吸に力が必要そうか」「歯ぐきの色は正常か」「横になれるか」「元気があるか」を同時に確認してください。
最初に緊急性を確認する
呼吸が速い犬で最も重要なのは、単なる頻呼吸なのか、呼吸困難が起きているのかを見分けることです。
【すぐ動物病院へ連絡したいサイン】
- 明らかに呼吸が苦しそう
- 口を開けたまま苦しそうに呼吸している
- 首を伸ばし、肘を外側へ張って呼吸している
- 横になれず、座った姿勢を続ける
- 歯ぐきや舌が青・紫・灰色っぽい
- ぐったりして反応が弱い
- 倒れる・失神する
- 胸やお腹を大きく使って呼吸している
Merck Veterinary Manualでは、努力呼吸や粘膜色の変化は救急で重視すべき所見とされ、口を開けた努力性呼吸や青色の粘膜は重い酸素不足を示すことがあります。
呼吸が苦しそうな犬は、呼吸数を何度も測ることより、できるだけ興奮させず速やかに受診することを優先してください。
安静時の呼吸数を測る
呼吸数を測る場合は、散歩直後や興奮中ではなく、犬が落ち着いて休んでいるとき、できれば睡眠中に確認します。
呼吸数の数え方
- 犬が静かに休んでいる、または眠っていることを確認する
- 胸が上がって下がる動きを1回の呼吸として数える
- 30秒間数える
- 数えた回数を2倍して1分間の呼吸数にする
- 時刻と数値を記録する
VCA Animal Hospitalsでは、静かに休んでいる・睡眠中の犬では1分あたり15~30回程度を一般的な目安とし、30回を継続して超える場合は異常として獣医師への相談を勧めています。一方、Merck Veterinary Manualの一般的な安静時参考範囲は18~34回/分です。
基準値には資料や個体差があります。そのため、1回だけの数値で病気と決めず、普段の犬自身の安静時呼吸数と比較することが大切です。
運動・暑さ・興奮後なら落ち着いた後に再確認する
犬は運動後、暑い環境、興奮、ストレスなどでも呼吸が速くなります。Merck Veterinary Manualでも、頻呼吸は病気のサインになる一方、激しい運動後や不安時には健康な動物でも起こるとされています。
散歩や遊びの直後であれば、涼しく落ち着ける環境へ移し、呼吸が戻るかを観察します。
- 運動を終えている
- 室温が高すぎない
- 興奮が落ち着いている
- 横になって休めている
- パンティングではなく通常呼吸に戻っている
十分に休んでも呼吸が速いまま、または呼吸の努力が増えてくる場合は受診を検討してください。
犬の呼吸が速くなる主な原因
呼吸が速い原因は一つではありません。見た目だけで心臓病や肺炎などと決めることはできません。
暑さ・運動・興奮
体温を下げるためのパンティングや運動後の呼吸増加は生理的に起こります。ただし、暑い環境で激しいパンティング、ぐったり、ふらつきなどがある場合は熱中症の可能性があり、緊急対応が必要です。
痛み・発熱・不安
痛みや発熱、強い不安でも呼吸数が増えることがあります。呼吸器症状が目立たなくても、震え、姿勢の変化、元気消失などがないか確認します。
心臓の病気
心不全などで肺に水がたまると、安静時・睡眠時の呼吸数が増えることがあります。Merck Veterinary Manualでは、肺水腫の進行初期に頻呼吸がみられ、その後に呼吸困難へ進む場合があるとされています。
心臓病の治療中の犬では、獣医師から安静時・睡眠時呼吸数を定期的に記録するよう指示されることがあります。
肺・気道の病気
肺炎、気管・気管支の病気、胸腔内の液体や空気などでも呼吸が速くなることがあります。咳、鼻水、呼吸音の変化などを伴う場合があります。
貧血・全身性疾患
血液中の酸素運搬能力が低下する貧血や、重い感染症などの全身性疾患でも呼吸数が増える場合があります。
歯ぐきが白っぽい、元気がない、食欲が落ちているなど、呼吸以外の変化も確認してください。
自宅で確認したい8項目
- 安静・睡眠時の1分間の呼吸数
- いつから速くなったか
- 運動・暑さ・興奮との関係
- 呼吸に力が必要そうか
- 歯ぐき・舌の色
- 咳や鼻水の有無
- 元気・食欲・歩き方
- 横になって眠れるか
可能であれば、犬を興奮させない範囲で呼吸の様子を動画に残すと、受診時に普段との違いを伝えやすくなります。
歯ぐきの色を確認する
通常はピンク色が目安ですが、個体によって色素沈着があります。普段の色を知っておくことが重要です。
Merck Veterinary Manualでは、青色や灰色などの粘膜色変化は重い呼吸障害でみられることがあるとされています。
【色の異常と全身状態を一緒に見る】
歯ぐきや舌が青・紫・灰色っぽく、呼吸も苦しそうな場合は緊急です。 自宅で様子を見続けず、動物病院へ連絡してください。
呼吸が速いときに避けたい対応
- 苦しそうな犬を何度も歩かせて様子を見る
- 興奮させて呼吸数を繰り返し測る
- 人用の咳止めや薬を自己判断で与える
- 心臓薬・利尿薬などの量を自己判断で変更する
- 「暑いだけ」と決めつけて長時間待つ
- 呼吸困難の犬を無理に横向きへ寝かせる
呼吸が苦しい犬は、動かしたり押さえ込んだりすると状態が悪化することがあります。できるだけ静かにし、犬が楽な姿勢を取れるようにしてください。
呼吸が速い犬の受診時に伝えたいこと
- 呼吸が速いことに気づいた時刻
- 安静・睡眠時の呼吸数
- 運動後だけか、休んでも続くか
- 咳・鼻水・吐き気の有無
- 歯ぐきの色
- 横になって眠れるか
- 元気・食欲の変化
- 現在の薬・サプリ
- 心臓病・呼吸器疾患などの既往歴
- 暑い環境や誤食など直前の出来事
呼吸数の記録や動画があれば、診察室では緊張して再現しにくい症状を伝える助けになります。
呼吸が速いときに行われる主な検査
呼吸が速い原因を調べるため、まず呼吸状態を確認し、必要に応じて酸素投与などの安定化を優先します。呼吸困難が強い場合は、検査より先に状態を安定させることがあります。
| 検査・確認 | 目的の例 |
|---|---|
| 身体検査 | 呼吸様式、心音・呼吸音、粘膜色などを確認 |
| 胸部X線 | 肺、心臓、胸腔内の状態を確認 |
| 超音波検査 | 心臓や胸腔内の状態を必要に応じて評価 |
| 血液検査 | 貧血、炎症、臓器状態などを確認 |
| その他 | 症状に応じて酸素化評価などを追加 |
すべての犬にすべての検査を行うわけではありません。Merck Veterinary Manualでも、呼吸困難の救急患者ではまず気道・呼吸・循環を評価し、必要に応じて酸素投与や安定化を行った後に画像検査などを進めます。
「30回を超えたら即救急」と単純化しない
VCAでは安静・睡眠時呼吸数が継続して30回/分を超える場合を異常の目安としていますが、Merck Veterinary Manualの一般的な安静時参考範囲は18~34回/分です。
このため、数字だけで救急かどうかを決めるのではなく、普段の値からの変化と呼吸努力・粘膜色・全身状態を合わせて判断することが大切です。
心臓病などで獣医師から個別の基準を指示されている犬は、その基準を優先してください。
診療費は原因と検査内容で変わる
呼吸が速い犬では、診察だけでなく胸部X線、超音波、血液検査、酸素管理などが必要になる場合があります。重症度や原因によっては入院が必要になることもあります。
費用は症状や検査・治療内容によって大きく変わるため、一律の金額では判断できません。
犬の呼吸が速いときは「安静時か」と「苦しそうか」を最優先で確認する
犬の呼吸が速いときは、まず運動・暑さ・興奮による一時的な変化か、安静・睡眠時にも続いているかを確認します。
安静にしても呼吸が速い、呼吸に力が必要、横になれない、歯ぐきや舌の色がおかしい、ぐったりする場合は、呼吸数の計測を続けるより受診を優先してください。
症状が落ち着いている場合でも、安静時呼吸数を記録し、咳・元気・食欲・姿勢などの変化と一緒に動物病院へ伝えると診断の助けになります。



