犬がかゆがるときは、まず「どこを、どのくらい強く、いつからかいているか」を確認します。かゆみは病名ではなく症状で、ノミ・ダニなどの寄生虫、細菌や酵母の感染、アレルギーなど、さまざまな原因で起こります。
軽く一時的にかく程度なら経過を見られることもありますが、何度もかき続ける、舐め続ける、皮膚が赤い、毛が抜ける、においや分泌物があるなどの変化があれば原因確認が必要です。
自宅では「原因を決める」のではなく、かゆい場所・強さ・時間帯・皮膚の変化を記録し、掻き壊しや全身状態の悪化があれば早めに動物病院へ相談します。
犬がかゆがるとき、最初に確認したいこと
かゆみの原因を自宅だけで特定するのは難しいため、まず受診時に役立つ情報を集めます。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| かゆい場所 | 顔、耳、足先、お腹、脇、背中、尾の付け根など |
| かゆみの強さ | 時々かく/何度もかく/眠れないほど続く |
| 皮膚の変化 | 赤み、フケ、脱毛、傷、かさぶた、べたつき |
| 始まった時期 | 急に始まったか、以前から繰り返しているか |
| 季節性 | 特定の季節だけ悪化するか |
| 予防歴 | ノミ・マダニ予防をいつ行ったか |
| 食事・薬 | 最近変えたフード、おやつ、薬、サプリがあるか |
AAHAのアレルギー性皮膚疾患ガイドラインでも、かゆみの場所、強さ、季節性、環境、発症年齢などの詳しい問診が診断の重要な手掛かりになるとされています。
「かく」以外もかゆみのサイン
犬のかゆみは、後ろ足で体をかく行動だけではありません。
かゆみで見られる行動
- 足先や体を何度も舐める
- 皮膚を噛む・かじる
- 顔や体を床・家具にこすりつける
- 耳を何度もかく
- 頭を頻繁に振る
- 落ち着かず、同じ場所を気にし続ける
Merck Veterinary Manualでも、かゆみのある犬では掻く、噛む、舐めるといった行動がみられ、全身に出る場合も一部だけに出る場合もあると説明されています。
犬がかゆがる主な原因
かゆみには多くの原因があります。見た目だけで「アレルギー」と決めつけないことが重要です。
ノミ・ダニなどの寄生虫
Merck Veterinary Manualでは、犬のかゆみを調べる際、まずノミやダニなどの寄生虫を除外することが重要とされています。
ノミアレルギー性皮膚炎では、腰から尾の付け根、後肢周辺などに強いかゆみや皮膚病変がみられることがあります。ノミが1匹も見つからないからといって、ノミ関連の問題を完全には否定できません。
細菌や酵母による皮膚感染
細菌やマラセチアなどの二次感染があると、かゆみが強くなることがあります。脱毛、フケ、におい、べたつき、分泌物などを伴う場合があります。
感染が疑われる場合は、皮膚の細胞診などで確認し、原因に応じた治療が必要になります。
環境アレルギー
花粉、ハウスダストなどの環境要因が関係するアトピー性皮膚炎では、慢性的・反復性のかゆみがみられます。
Merck Veterinary Manualでは、犬のアトピー性皮膚炎は他のかゆみの原因を除外しながら診断し、ノミ、食事、環境アレルゲン、二次感染などの悪化要因を確認するとしています。
食物アレルギー
食物アレルギーでも、顔、耳、足、お腹などを中心にかゆみが出ることがあります。ただし、症状だけで食物アレルギーと断定することはできません。
Merck Veterinary Manualでは、食物アレルギーを確認する信頼性の高い方法は、獣医師の指導による除去食試験と、その後の食事負荷による確認とされています。
「かゆい=フードが原因」と決めて、短期間に何種類もフードを変更すると、かえって原因を追いにくくなることがあります。
かゆがる犬に自宅でできること
受診までの間にできるのは、原因治療ではなく、悪化を防ぎながら情報を残すことです。
写真・動画を残す
赤み、脱毛、傷、かゆがる行動などを、無理のない範囲で記録します。症状が診察時に落ち着いていても、経過を伝える材料になります。
かゆみの時間帯と頻度を記録する
「朝だけ」「散歩後に増える」「夜眠れないほど続く」など、時間との関係を記録します。
最近変えたものを整理する
- フード・おやつ
- シャンプー
- 洗剤・柔軟剤
- 寝具
- 薬・サプリ
- ノミ・マダニ予防薬
変更した日付まで分かれば、受診時に伝えやすくなります。
掻き壊しを悪化させない
同じ場所を強く掻き続けると、皮膚が傷つき、二次感染につながる可能性があります。掻き壊しが強い場合は、病院へ相談し、必要に応じてエリザベスカラーなどの使用方法を確認します。
かゆがる犬に自宅で避けたい対応
自己判断で行わない方がよいこと
- 人用のかゆみ止め・塗り薬を使う
- 以前ほかの犬に処方された薬を使う
- 赤い部分を強く洗う・こする
- 薬用シャンプーを自己判断で頻回に使う
- 短期間で次々にフードを変更する
- ノミ・ダニ薬を表示以上の頻度で追加する
Merck Veterinary Manualでは、かゆみ止めの薬も原因や感染の有無によって使い分けが必要で、感染がある状態での治療選択にも注意が必要とされています。
「とりあえずかゆみだけ止める」ことで原因確認が遅れる場合があります。強い症状があるときは市販品を重ねるより受診を優先してください。
かゆみが続くとき、動物病院では何を確認する?
犬のかゆみでは、原因を順番に絞ることが重要です。
AAHAのガイドラインでは、かゆみのある犬の基本的な皮膚検査として、皮膚細胞診、ノミの確認、皮膚掻爬、耳症状がある場合の耳の細胞診などが挙げられています。
| 確認・検査 | 主な目的 |
|---|---|
| 問診・皮膚観察 | 場所、季節性、生活環境、経過を確認 |
| ノミの確認 | 外部寄生虫の可能性を確認 |
| 皮膚掻爬 | ダニなどを調べる |
| 皮膚細胞診 | 細菌・酵母などを確認 |
| 耳の検査 | 耳をかく・外耳炎がある場合に確認 |
| 食事試験 | 食物アレルギーが疑われる場合に検討 |
検査はすべての犬に一度に行うわけではありません。症状や既往歴に応じて獣医師が必要性を判断します。
受診を急いだ方がよいサイン
かゆみだけなら必ず救急というわけではありませんが、次の状態では早めに動物病院へ連絡します。
- 掻き壊して出血している
- 眠れないほど強くかき続ける
- 短時間で赤み・腫れが広がる
- 顔や口周りが急に腫れた
- 呼吸が苦しそう
- ぐったりしている
- 嘔吐など全身症状もある
- 皮膚から膿・強いにおい・大量の分泌物が出る
顔の急な腫れや呼吸異常など、全身性のアレルギー反応が疑われる場合は、記録や原因探しより受診を優先してください。
数日様子を見るより受診した方がよいケース
緊急ではなくても、次のような状態では長く様子を見ない方がよいでしょう。
- かゆみが繰り返す
- 日に日に強くなっている
- 毛が薄くなってきた
- 皮膚が赤い・黒ずむ・厚くなる
- 耳も同時にかゆがる
- 足先をずっと舐めている
- 治ってもすぐ再発する
皮膚の赤みが目立つ場合は、原因と受診時に伝えるポイントを次の記事で整理しています。
耳をかく場合は皮膚とは別に耳の確認も必要
耳を頻繁にかく、頭を振る、耳が臭う、赤い、分泌物がある場合は、外耳炎などが関係している可能性があります。
アレルギーが背景にある犬では、皮膚症状と耳症状が繰り返し出ることもあります。
耳をかくときの検査・治療費は、こちらで確認できます。
受診時に伝えると役立つこと
病院で伝えるメモ
- いつからかゆがっているか
- 最初にかゆがった場所
- 今はどこをかくか
- 1日のうち強くなる時間帯
- 季節による変化
- ノミ・マダニ予防の製品名と最終使用日
- 現在のフード・おやつ
- 最近始めた薬・サプリ・シャンプー
- 過去にも同じ症状があったか
分からないことは推測して埋めず、「確認できていない」と伝えて構いません。写真や動画があれば一緒に見せます。
治療後も「かゆみが減ったか」だけで終わらせない
薬で一時的にかゆみが軽くなっても、寄生虫、感染、アレルギーなどの原因管理が必要な場合があります。
Merck Veterinary Manualでは、かゆみを長期的に管理するには原因の特定と、二次感染や悪化要因への対応が重要とされています。
治療後に記録したいこと
- 薬を使った日時
- かゆみの強さがどう変わったか
- 赤み・脱毛・においの変化
- 新しくかゆがる場所が出ていないか
- 薬を飲めなかった・吐いたなどの問題
フケも増えている場合は、皮膚の乾燥だけでなく別の皮膚トラブルが隠れていることがあります。
犬がかゆがるときは「原因探し」より観察と受診判断を優先する
犬のかゆみは、ノミ・ダニなどの寄生虫、細菌や酵母による感染、環境アレルギー、食物アレルギーなど、複数の原因で起こります。
自宅では、かゆい場所、強さ、時間帯、皮膚の変化、予防歴、食事や薬の変更を記録します。人用の薬を使ったり、フードやケア剤を次々に変更したりせず、原因を確認しやすい状態を保つことが大切です。
掻き壊し、眠れないほどの強いかゆみ、急な顔の腫れ、呼吸異常などがある場合は、自宅で様子を見続けず動物病院へ相談してください。
参考:Merck Veterinary Manual「Itching (Pruritus) in Dogs」「Atopic Dermatitis in Dogs」「Cutaneous Food Allergy in Animals」「Flea Allergy Dermatitis in Dogs and Cats」、AAHA「2023 AAHA Management of Allergic Diseases in Dogs and Cats Guidelines」


