子宮蓄膿症は、子宮に感染が起こり、膿がたまる病気です。主に避妊していない雌犬で見られ、陰部からの分泌物だけでなく、食欲低下、元気消失、水を多く飲むといった全身の変化が受診のきっかけになることもあります。
急速に状態が悪化する場合があるため、発情後の体調不良を「いつものこと」と決めつけないことが大切です。膿が見えない場合も含め、疑う症状、検査、治療を進める理由を説明します。

発情と体調変化をつなげて病院へ伝える
子宮蓄膿症には発情後のホルモン環境が関係します。避妊していない雌犬が体調を崩した時は、最後の発情がいつだったか、出血や陰部の変化があったかを病院へ伝えます。
年齢を重ねた犬で注意したい病気ですが、若いという理由だけで否定できません。発情日を正確に覚えていなくても、受診をためらう必要はなく、分かる範囲で説明してください。
電話と診察で伝えること
- 避妊手術を受けたか、いつ受けたか、分かる範囲の手術内容
- 最後の発情や陰部出血のおおよその時期
- 食欲・元気・飲水・尿量の変化と、始まった日
- 陰部の分泌物、嘔吐、腹部の膨らみの有無
- 交配や出産の経歴、ホルモン薬を含む使用薬
陰部から膿が出なくても、子宮蓄膿症は否定できない
子宮の出口である子宮頸管が開いている場合は、膿や血の混じった分泌物が外へ出ることがあります。犬が舐めていて、飼い主が気付かないこともあります。
一方、出口が閉じている場合は、子宮内に内容物がたまっても分泌物が見えません。「膿が出ていない」「出血がない」ことを、様子を見る根拠にしないでください。
分泌物が出ている場合も、子宮の感染が解決したことにはなりません。発情の出血や尿の血液との区別も必要で、色や臭いだけでは診断できません。
水を多く飲む、食べないなどの変化も重要になる
子宮だけの病気に見えても、感染に伴う炎症が全身へ影響することがあります。元気消失、食欲低下、飲水・尿量の増加があり、嘔吐や腹部の膨らみなどが見られる場合もあります。
これらの症状は腎臓の病気などでも起こります。子宮蓄膿症と自己診断するのではなく、避妊歴と発情の情報を添えて早めに診察を受けることが大切です。
立てない、反応が鈍い、呼吸が苦しい、急にぐったりした場合は直ちに病院へ連絡します。発情日や写真を探し終えるまで待たないでください。
検査では、子宮の状態と全身への影響を調べる
診察では、経過と身体所見を確認したうえで、画像検査や血液検査などを組み合わせます。子宮に内容物があるかだけでなく、脱水や臓器への影響を評価することも治療計画につながります。
| 確認する内容 | 主な目的 |
|---|---|
| 問診・身体検査 | 避妊歴、発情との関係、痛み、意識や循環の状態を確認します。 |
| 超音波などの画像検査 | 子宮の大きさや内容物を調べ、妊娠など他の状態とも区別します。 |
| 血液検査など | 炎症、貧血、腎臓を含む全身状態を調べ、麻酔・治療の検討に役立てます。 |
検査の組み合わせは状態で変わります。悪化している時は、詳しい検査を全て終える前に点滴などの対応を始めることもあり、何を先に行うかを獣医師が判断します。
手術と、手術前の安定化を一つの治療計画として考える
多くの犬で、感染した子宮と卵巣を摘出する手術が検討されます。通常の予防的な避妊手術と異なり、感染と全身状態の悪化がある中で治療を進めるため、必要な管理も変わります。
点滴や抗菌薬、痛みへの対応などは、手術と無関係な追加処置ではありません。循環や臓器の状態を整え、感染に対処するために必要となる場合があります。
「すぐ手術」と「まず安定化」のどちらが適切かを家庭で決めることはできません。連絡と受診を急いだうえで、病院で安全性と治療のタイミングを評価してもらいます。
内科的な管理は、全ての犬に選べる代替案ではない
繁殖を考えている犬などで内科的治療を検討する場合もありますが、全身状態や子宮の状態などの条件があり、綿密な管理が必要です。治療中の悪化や再発の可能性も説明を受けます。
残っている抗菌薬を飲ませて自宅で待つことは、病院で行う内科的管理と同じではありません。手術への不安がある時も、受診後に治療の選択肢と限界を相談してください。
予後と費用は、今回の重症度を踏まえて確認する
手術すれば必ず助かる、年齢が高ければ治療できない、と一律にはいえません。全身の炎症、腎臓などの状態、子宮の損傷、合併症によって見通しが変わります。
費用は手術代だけでなく、検査、安定化、麻酔管理、入院、術後の再検査を含めて確認します。予算に制約があれば早めに伝え、当日必要な処置と、追加される可能性のある項目を相談します。
退院後は、傷口だけでなく食欲・飲水・元気も記録する
薬の使い方、傷を舐めないための保護、運動制限、再診日を確認します。傷の出血や開き、嘔吐、食べられない状態、元気の悪化など、どの変化で再連絡するかも聞いてください。
避妊手術歴がある場合も、体調不良を放置しない
通常、適切な避妊手術は子宮蓄膿症の予防につながります。ただし、まれに残存組織などに関係する病気もあるため、避妊済みという情報だけで症状を無視しないでください。
まだ避妊していない犬では、元気な時に繁殖の予定と持病を含めて予防的な手術を相談します。現在すでに症状がある場合は、予防の相談ではなく、その体調変化の診察を優先します。