犬に舐められ手足切断?恐ろしい人獣共通感染症

日本ではあまり聞かない話ですが、海外では、犬に傷口を舐められたことで感染症が発症し、手足を切断したという例があります。

例えば、2013年にカナダで起きた事例ですが、飼い主が飼い犬のシーズーに擦り傷を負わされ、その傷口を飼い犬3匹になめられたことで「カプノサイトファーガ・カニモルサス」という細菌が感染。

飼い主は犬に舐められた数日後に昏睡状態に陥り、6週間後に回復したものの、そのときには手足が切断されていたといいます。

飼い主を恐怖に陥れたこの細菌は、犬の唾液などに一般的に存在する細菌ですが、人に感染することはごく稀だそう。カナダ公衆衛生局によると、1976年以来、世界で報告された人への感染はわずか200例ほどだといいます。

カプノサイトファーガ・カニモルサスは、主に犬や猫などによる動物に、咬まれたりひっかかれたりした場合に感染します。人から人への感染は報告されていません。

この菌に侵されると、発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛などが現れます。発症までは感染してから1~8日後が一般的。重症の場合、敗血症、髄膜炎、多臓器不全に進行することがあり、最悪の場合は死に至ります。

このような人間にも感染する感染症を「人獣共通感染症」といいますが、こういった感染症を防ぐためにも、飼い主自身も予防しておく必要があります

感染予防としては一般的な動物からの感染症予防対応と何ら変わりませんが、日ごろから犬との過度な触れあいは避けた方が無難です。動物と触れ合った後には必ず手洗いなどを確実にするようにします。

また、免疫力が低下している方は要注意。例えば、アルコール中毒、糖尿病などの慢性疾患、免疫異常疾患、悪性腫瘍などにかかっている方や高齢者の方、お子さんは感染した場合に重症化しやすいため特に注意するようにしましょう。

カプノサイトファーガ感染症の他に、犬や猫からうつる感染症として、狂犬病やパスツレラ症、コリネバクテリウム・ウルセランス菌感染症などが知られています。

狂犬病はほぼ100%死亡するといわれ、パスツレラ症、コリネバクテリウム・ウルセランス菌感染症にかかった場合でも、稀に重症化し、敗血症や髄膜炎、呼吸困難、脳炎などを併発して亡くなることがあります。

狂犬病は、狂犬病ウイルスを保有するイヌ、ネコおよびコウモリを含む野生動物に咬まれたり、引っ掻かれたりしてできた傷口からの侵入、および極め て稀ではあるが、濃厚なウイルスによる気道粘膜感染によって発症する人獣共通感染症である。

引用元:狂犬病とは‐国立感染症研究所

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人獣共通感染症の一つ「犬のレプトスピラ症」

犬の感染症のひとつに、レプトスピラ症があります。レプトスピラ症というのは、レプトスピラ属の細菌の中で病原性を持った病原性レプトスピラによって引き起こされる感染症のこと。

動物間で循環伝染しています。人にはレプトスピラ菌に感染したイヌやネズミなどの尿、尿に汚染された水、土壌から経皮的に皮膚、粘膜表面の創傷、擦傷、または結膜を通過して体内に感染します。また本菌に汚染した食物からも経口的に感染します。

引用元:レプトスピラ症の感染経路‐環境省

主に症状を起こすのは、イヌレプトスピラ菌黄疸出血レプトスピラ菌の2種類です。

感染した犬や、ネズミなどの動物の尿や、その尿に汚染された水や土に触れたり、汚染された果物や野菜などの食べ物を食べたりすることにより感染します

菌を保有した犬同士が性器を舐めあう、交尾をすることでも感染します。犬やネズミなどのほとんどの哺乳類に感染しますが、ヒトからヒトへの感染は起こりません。最大の感染源はネズミだといえます。

ネズミには感染しても症状は現れず、生きている間中は尿から菌を排出し続けます。ヒトにも動物にも同等に感染する人獣共通感染症のひとつで、感染症法で四類感染症に指定されています

多くの犬は感染しているにも関わらずハッキリとした症状が出ないまま治癒しますが、この場合は回復後、長期間尿とともに菌を排出し続け、他の動物に感染する原因となります。

症状が現れた場合は、イヌレプトスピラ菌と黄疸出血レプトスピラ菌のどちらに感染したかで主な症状は異なります。

イヌレプトスピラ菌に感染した場合、「出血型」の症状が現れます。主症状は、40度前後の発熱、食欲不振、元気の消失、嘔吐、血便、血尿、吐血、白目部分やおなかの皮膚が黄色く変色する「黄疸」などが起こります。末期には脱水や尿毒症を起こして高い確率で死に至ります。

黄疸出血レプトスピラ菌に感染した場合の症状は「黄疸型」と呼ばれており、突然の高熱、食欲の急激な減退、歯茎からの出血、全身の震え、黄疸といった症状が現れます。

出血型よりも症状が重いことが多く、ひどい場合は発症後わずか数時間で死に至ることもあります

レプトスピラ症の治療には、抗菌薬の投与が有効だといわれています。予防するためにも、ワクチンの接種を行うようにしましょう。

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実は恐ろしい!人間に感染する犬の寄生虫

回虫症や瓜実条虫症など、犬が卵を飲み込むなどして寄生虫が感染する場合があります。

症状が出ない場合もあるので気づきにくいのですが、その犬の糞から排出された卵や幼虫は何らかの拍子で人間が触れてしまった場合に、人間に感染することもおおいにあり得ます。

だからこそ、犬の寄生虫予防は徹底して行うべきなのです。人間に感染する犬の寄生虫をご紹介します。

回虫症
犬の回虫症は、線中に属する寄生虫の一種である回虫によって引き起こされる病気です。

回虫は哺乳類の小腸に寄生する虫で、メスの場合は20~35センチくらいまで成長し、1日なんと10万個から25万個もの卵を動物の小腸の中に産み落とします。

これらの卵は糞から一旦体外へと排出され、その糞に触れた食物や手などからもう一度体内に入り込み、成長します。

回虫症になると、食欲不振、下痢、嘔吐、腹痛、腹部のふくらみ、貧血、肺炎などを起こします。

人の体内に入り込んだ場合は、幼虫移行症、痙攣、髄膜炎、角膜炎、失明、皮膚炎などになる恐れがあります。

フィラリア症
フィラリアは、蚊の媒介によって犬の心臓や肺の血管に寄生する寄生虫です。血液中の栄養分を吸って成長し、そうめんのような細長い17~28センチほどの大きさになります。

フィラリア症に感染した場合、ほとんどが慢性経過をたどりますが、その途中でフィラリアが移動するため突然血尿や呼吸困難に陥ることがあります。

この場合は何もしないと数日の間に死に至ります。人間にも、感染力のある幼虫を持った蚊が吸血した場合に感染します。

感染した場合は無症状なことがほとんどですが、咳が出たり、胸痛などが起きたりすることがあります。

エキノコックス症
北海道に生息するキタキツネの感染で有名ですが、犬や人間に感染することもあります。条中から排出された卵が偶然口に入ることにより感染しますが、ウサギの肉から感染する例も報告されています。

感染すると、寄生部位によって症状はことなりますが、大部分が肝臓に寄生したびたび悪性腫瘍と誤診されることがあります。人間の場合も肝臓、肺、腎臓、脳などに幼虫がすみつきます。

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マダニが引き起こす犬の病害と、人へのウイルス感染

最近では、人間の間で、マダニが媒介するウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群」といった病気が報告されています。人に発症すると、発熱、嘔吐、下痢などの症状がみられ、死亡者も確認されています。

このウイルスは「ブニヤウイルス科フレボウイルス属SFTSウイルス」と呼ばれるもので、マダニが媒介するウイルスで、蚊による媒介については否定されています。

流行地である中国の農村部では、犬や家畜に数百のマダニが寄生していることも珍しくありません。

SFTSウイルスによる感染症はヒトにしか報告されていませんが、マダニが寄生することによる犬の病害はいくつかあります。

マダニから大量に吸血された際には貧血に陥り、マダニの唾液がアレルゲンとなり強いかゆみなどを引き起こします

唾液中に毒性物質を産生するものもおり、そういったマダニに吸血された場合は、神経障害を引き起こす場合もあります。

日本国内では中国ほどマダニがいるわけではありませんが、草むらにはマダニが潜んでいることが考えられます。

予防のためにも、草が多く茂っている場所には犬を近づけない方がいいでしょう。また、ダニ駆除剤を使用することが予防につながります。

ホームセンターなどにも販売されており、動物病院で購入できるものと形が似てなおかつ安いため同じようなものを格安で購入できたと思ってしまいがちですが、あくまでも「医薬部外品」です。効果には限界があり、持続効果もそう長くはありません。

動物病院では、マダニを予防するためのお薬をきちんと処方してくれますから、予防や治療は医薬部外品ではなく「動物用医薬品」で行うようにしましょう

よく、マダニがいても自分が取れば大丈夫、と思っている飼い主もいますが、あれほどに小さな寄生虫を手で全て取り除くのは不可能です。

マダニは顔の周りやお腹など、皮膚の柔らかい部位に、口から出ている突起を差し込んで食いつき、体を固定しています。

ですから、むやみに手で引っ張ると犬の皮膚にその突起が残ってしまい皮膚炎の原因になることがあるので、むやみに手で取ろうとしてはいけません。

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