犬がご飯を食べない原因は?考えられることと動物病院で伝えたいポイント

犬がご飯を食べない原因は?考えられることと動物病院で伝えたいポイント

犬がご飯を食べない原因は、食事や環境の変化だけでなく、口の痛み、胃腸の不調、感染症、内臓の病気など幅広く考えられます。「好き嫌いだろう」と決めつけず、食べない期間、元気、水分、嘔吐・下痢、痛みの有無などを合わせて確認することが大切です。

食欲低下は病名ではなく、さまざまな体調変化で見られるサインです。動物病院では、いつから食べていないか、最後に正常に食べた時間、食事内容、水を飲む量、排泄、薬、誤食の可能性などが診断の手がかりになります。

POINT

犬がご飯を食べないときは、原因を家庭で断定するのではなく、「食べたいのに食べられないのか」「そもそも食欲がないのか」「ほかの症状があるか」を整理して受診判断につなげます。

犬がご飯を食べない主な原因

食欲低下の原因は一つとは限りません。食事や環境の問題から、口腔・消化器・全身性疾患まで幅広く考えます。VCAでは、食欲低下には「本当に食欲がない状態」と、食べたいのに噛む・飲み込むなどが難しい「偽性食欲不振」があると説明しています。

食事そのものの変化

フードの種類、香り、食感、保存状態、食事場所などが変わったことが影響する場合があります。

  • 急にフードを変更した
  • 開封後時間がたち香りが変わった
  • ウェットからドライなど食感が変わった
  • 食器や食事場所を変えた
  • おやつを多く食べた

ただし、食事変更と同じタイミングで病気が始まることもあるため、フードだけが原因と断定しません。

ストレスや生活環境の変化

引っ越し、家族構成の変化、旅行、長時間の留守番、大きな音、新しい犬や猫を迎えたことなどが食欲に影響する場合があります。

一方、行動上の原因と考える前に、体調不良が隠れていないか確認する必要があります。Merck Veterinary Manualでも、食欲低下の行動要因を考える前に医学的な原因を除外することが重要とされています。

口・歯・あごの痛み

犬自身は食べたそうにするのに、口へ入れられない、噛めない、食べ物を落とす場合は、歯や歯ぐき、口内、あご、のどなどの問題が関係することがあります。

口の問題を疑う手がかり

  • フードへ近づくが食べない
  • 硬い物だけ避ける
  • 片側だけで噛む
  • 食べ物を口から落とす
  • よだれが増えた
  • 口臭が急に強くなった
  • 口元を触ると嫌がる

Merck Veterinary Manualでは、噛む・飲み込む動作の異常は、口腔、歯、あご、咽頭、食道などの病気と関連することがあるとされています。

吐き気・胃腸の不調

胃腸炎、胃潰瘍、異物、膵臓や腸の病気など、消化器の不調で食欲が落ちることがあります。

食欲低下に加えて、

  • 嘔吐
  • 下痢
  • 腹部を痛がる
  • お腹が張る
  • 便に血が混じる
  • 黒い便が出る

などがないか確認します。

Merck Veterinary Manualでは、消化器疾患の一般的な徴候として、食欲低下、嘔吐、下痢、腹痛、膨満、脱水などを挙げています。

腎臓・肝臓など消化器以外の病気

ご飯を食べない原因は胃腸だけではありません。腎臓病、肝臓病、感染症、腫瘍など、全身の病気で食欲が低下することがあります。

Merck Veterinary Manualでも、嘔吐や食欲低下などの消化器症状が、腎疾患など消化器以外の病気でも起こることがあるとされています。

薬の影響

新しい薬を始めた後に食欲が変わる場合があります。

処方薬を自己判断で中止せず、

  • 薬の名前
  • 開始日
  • 最後に飲ませた時間
  • 食欲低下が始まった時間

を整理して動物病院へ伝えます。

痛み・発熱・全身の不調

関節痛、けが、発熱、呼吸器疾患などでも食欲が落ちることがあります。

「胃が悪い」と決めつけず、歩き方、呼吸、姿勢、反応など全身状態も見ます。

「食べない」と「食べられない」を分けて考える

食欲低下を整理するときは、次の2つを分けると動物病院へ伝えやすくなります。

状態 見られること
食欲がない 食事へ近づかない、においを嗅いでも離れる
食べたいが食べられない 食事へ近づく、口へ入れるが落とす、噛みにくそう

VCAでは後者を「pseudo-anorexia(偽性食欲不振)」と呼び、口・歯・咽頭などの問題で食べられないケースがあるとしています。

食べない期間を記録する

「今日食べていない」だけでは、どの程度の食欲低下か判断しにくくなります。

記録したい時間

  • 最後に正常量を食べた時間
  • 最後に少量でも食べた時間
  • 最後に水を飲んだ時間
  • 嘔吐・下痢が始まった時間
  • 薬を飲ませた時間

VCA Urgent Careでは、食欲低下が始まった時点を記録して獣医師へ伝えるよう案内しています。また、12時間以上食べていない場合や、糖尿病の動物が1食でも拒否した場合には受診を勧めています。

ただし、年齢・持病・体格・ほかの症状によって緊急度は変わるため、「12時間までは必ず待ってよい」という意味ではありません。

子犬・シニア犬・持病がある犬は早めに相談する

子犬、シニア犬、糖尿病などの持病がある犬では、食べない状態を長く様子見しない方がよい場合があります。

また、普段から薬を食事と一緒に飲ませている犬では、食べないことで投薬方法にも影響します。

持病がある犬は「何時間食べなかったら受診するか」を、普段の診察時にかかりつけ医へ確認しておくと安心です。

水を飲めているか確認する

食事だけでなく、飲水量も重要です。

水も飲まない、飲んでも吐く、尿量が極端に減ったなどの場合は、脱水や全身状態の悪化に注意が必要です。

嘔吐や下痢を伴うと、水分を失いやすくなります。

嘔吐・下痢を伴う場合は原因範囲が広がる

食欲低下だけでなく嘔吐・下痢がある場合、胃腸炎だけでなく、異物、中毒、感染症、膵臓や内臓の病気なども考える必要があります。

VCAでは、嘔吐に食欲低下、元気消失、腹痛、下痢、脱水、吐血、異物・中毒の疑いが伴う場合には、すぐ獣医師へ相談するよう案内しています。

誤食・中毒の可能性を確認する

犬が急に食べなくなった場合は、食べ物以外の物を飲み込んでいないかも確認します。

  • おもちゃ
  • 布・靴下
  • ひも
  • 包装材
  • 薬
  • 人の食べ物
  • 植物
  • 洗剤など

が減っていないか、ゴミ箱を荒らした形跡がないかを見ます。

中毒や異物が疑われる場合は、自己判断で吐かせず、何を・いつ・どのくらい食べた可能性があるかを確認して動物病院へ連絡してください。

お腹が膨れて吐こうとしても吐けない場合は急ぐ

腹部が急に膨らみ、落ち着かず、吐こうとしても何も出ない、よだれが多いなどの状態では緊急性が高い病気が含まれます。

「食べないだけ」と考えて自宅で様子を見ず、すぐ動物病院へ連絡してください。

「食べない原因」を家庭で決めるのではなく、受診につながる記録を残す

食欲不振の記事で重要なのは、病名当てではありません。

家庭では、

  1. いつから食べないか
  2. 食べたい様子があるか
  3. 水は飲めるか
  4. 嘔吐・下痢・痛みなどがあるか
  5. 誤食の可能性はないか
  6. 生活やフードに変化がなかったか

を整理し、必要なタイミングで動物病院へ伝えます。

家で無理に食べさせない

食欲がない犬へ、無理に大量のフードや水を口へ入れるのは避けます。

飲み込みに問題がある場合は誤嚥する危険があります。また、胃腸の状態によっては食事制限が必要なこともあります。

何を与えてよいか迷う場合は、動物病院へ確認します。

おやつだけ食べる場合も「問題なし」とは限らない

主食は食べないのに、おやつや嗜好性の高い食べ物だけ食べる場合があります。

単なる好みの場合もありますが、

  • 硬い主食は食べにくいが柔らかい物なら食べられる
  • 吐き気があり一部の食べ物だけ口にする
  • おやつの与えすぎで主食を食べない

など複数の可能性があります。

「おやつを食べるから病気ではない」と決めつけません。

フードを次々替えすぎない

食べないたびに新しいフード、おやつ、トッピングを次々与えると、何が原因だったのか分かりにくくなります。

体調に問題がなく、食事の好みが原因と考えられる場合でも、急な変更を繰り返さず、食事内容と食べた量を記録します。

動物病院で伝えたいこと

受診前に整理する項目

  • 最後に正常量を食べた日時
  • 現在のフード名と1日の給与量
  • 実際に食べた量
  • おやつ・トッピング
  • 水を飲む量
  • 嘔吐・下痢の有無と回数
  • 尿・便の変化
  • 元気・睡眠・歩き方
  • 体重変化
  • 薬・サプリ
  • 誤食・中毒の可能性
  • 最近の生活環境の変化

元記事でも、最後に正常に食べた時間、食事内容、水分、嘔吐・下痢、元気、排泄、薬や誤食の可能性を伝えることが診察に役立つポイントとして整理されていました。fileciteturn67file6

食べた量は「少し」ではなく可能なら数字で伝える

「いつもの半分」「普段180gだが今日は40g」など、できる範囲で数字にします。

フードを置いた量と残った量を量れる場合は、より正確に伝えられます。

写真や動画も、食べようとして口から落とす、吐く、よだれが多いなどの様子を伝える材料になります。

動物病院ではどんな検査をする?

必要な検査は、年齢、症状、身体診察、食べない期間などによって異なります。

一般的には、

  • 口腔内や全身の身体診察
  • 血液検査
  • 尿検査
  • 便・寄生虫検査
  • レントゲン検査
  • 超音波検査

などが検討されます。

Merck Veterinary Manualでは、嘔吐、腹痛、食欲低下、原因不明の体重減少などでは、血球検査、血液生化学検査、尿検査、寄生虫検査、必要に応じてX線・超音波・内視鏡・生検などが行われることがあるとしています。

治療は原因によって変わる

「食欲を出す薬」を使えば終わりというわけではありません。

原因に応じて、

  • 点滴などの水分・電解質補正
  • 吐き気や痛みに対する治療
  • 感染症や炎症への治療
  • 口腔疾患への処置
  • 異物への処置・手術
  • 基礎疾患の治療
  • 必要に応じた栄養サポート

などが検討されます。

Merck Veterinary Manualでは、病気に伴う食欲不振で嗜好性の高い食事だけでは改善しない場合、食欲刺激薬や、状況に応じて経鼻・胃瘻チューブなどの栄養サポートが使われることがあるとしています。

食欲が戻った後も再発・体重変化を見る

一度食べ始めても、すぐ元通りになったとは限りません。

数日は、

  • 食べる量
  • 水を飲む量
  • 嘔吐・下痢
  • 便・尿
  • 元気
  • 体重

を確認します。

食欲低下を繰り返す、体重が減り続ける場合は再受診します。VCAでも、持続的・意図しない体重減少は基礎疾患の評価が必要な場合があるとしています。

犬がご飯を食べないときの原因確認チェックリスト

  • □ 最後に正常量を食べた時間を確認した
  • □ 実際に食べた量を記録した
  • □ 食べたいのに食べられない様子がないか見た
  • □ 水を飲めているか確認した
  • □ 嘔吐・下痢・腹痛・膨満がないか確認した
  • □ 口臭・よだれ・食べ物を落とす様子がないか確認した
  • □ 薬・サプリの変更がなかったか確認した
  • □ 誤食・中毒の可能性を確認した
  • □ 生活環境やフードの変更を記録した
  • □ 子犬・シニア犬・持病犬では早めに相談した
  • □ 強い症状があれば食事工夫より受診を優先した
  • □ 受診時に食事・水分・排泄・薬・症状を伝えられるよう整理した
POINT

犬がご飯を食べない原因は、好みやストレスだけでなく、口腔疾患、消化器疾患、全身性疾患まで幅広くあります。家庭では原因を断定せず、緊急性と付随症状を確認し、受診時に役立つ情報を記録しましょう。