犬の細菌性皮膚炎は、皮膚の細菌感染が関わる炎症で、膿皮症と呼ばれる状態などを含みます。赤いぶつぶつ、かさぶた、脱毛、湿り、かゆみが見られますが、見た目だけでは真菌や寄生虫などの病気と区別できません。
治療では、感染の有無と深さを確かめ、皮膚が悪くなった背景も調べることが重要です。症状の見方、細胞診や培養の役割、外用・内服の選び方、家で観察する点を説明します。
細菌性皮膚炎で見られる症状と、早く相談したい変化
毛の根元のぶつぶつ、膿が入った小さな隆起、円形に皮がむける部分、かさぶた、まだらな脱毛などが手がかりになります。舐める、掻く、体をこする行動が増える犬もいます。
浅い感染と深い感染では、痛みや治療が異なる
感染は皮膚表面に限られる場合、表皮や毛包の浅い部分に及ぶ場合、さらに深い部分に及ぶ場合があります。深い感染では腫れ、痛み、膿や血が出る穴、潰瘍などが見られることがあります。
| 気付いた変化 | 病院へ伝えたいこと |
|---|---|
| ぶつぶつ・かさぶた | 最初の部位、増えた速さ、毛が抜けた範囲。 |
| 湿り・臭い | いつからか、膿や出血、触れたときの痛み。 |
| 指の間などの腫れ | 歩きにくさ、舐め方、片側か両側か。 |
| 元気・食欲の低下 | 皮膚以外の変化、服薬、持病。 |
強い痛み、急に広がる腫れ、深い傷、元気や食欲の低下があるときは、写真だけで判断せず早く病院へ連絡してください。
膿が出る場所を押す、針でつぶす、かさぶたを剥がすなどの処置は自宅で行わないでください。
皮膚にいる細菌が、なぜ病気に関わるのか
健康な犬の皮膚や粘膜にも細菌はいます。細菌性皮膚炎は、単に「汚れたから」「他の犬から菌をもらったから」だけで説明できません。皮膚の状態や体の防御が変わり、普段いる菌が感染を起こす場合があります。
背景にあるかゆみや皮膚の変化も確認する
アレルギー、寄生虫、皮膚のしわ、舐め続ける刺激、内分泌の病気などが背景になることがあります。何度も再発する場合は、今回の菌だけでなく、なぜ感染しやすい状態が続くのかを調べます。
感染でかゆみが増え、その刺激でさらに皮膚が傷むこともあります。感染の治療とかゆみ・元の病気の管理は、どちらか片方だけでよいとは限りません。
真菌や寄生虫でも似た見た目になる
マラセチアなどの酵母、皮膚糸状菌、ニキビダニなどが関わる病気も検討します。円形の脱毛なら必ず真菌、臭いが強ければ必ず細菌、とは判断できません。使う薬が異なるため、自己判断で抗菌薬や抗真菌薬を選ばないでください。
細胞診は、その場所で細菌と炎症を確かめる検査
細胞診では、病変から採った材料を顕微鏡で観察し、炎症細胞、細菌、酵母などを調べます。皮膚の細菌感染が疑われるときの基本的な検査で、見た目と合わせて感染の関与を評価します。
赤みや臭いだけで薬を決めず、必要な検査で細菌感染を確認することが、不要な抗菌薬の使用を減らすことにもつながります。
培養と薬剤感受性検査は、薬の選択を助ける
培養では菌を増やして調べ、薬剤感受性検査ではどの抗菌薬が効きそうかを評価します。深い感染、治療がうまくいかない場合、耐性菌が疑われる場合、内服等の全身治療を検討する場合などに重要です。
培養結果も採取部位や細胞診、症状と合わせて判断します。皮膚表面に付いた菌が混ざる場合もあるため、「培養で出た菌は全て治療すべき菌」とは限りません。
受診前に、薬と洗浄の履歴を伝える
最近使ったシャンプー、消毒剤、外用薬、内服薬は、商品名と最終使用日を伝えます。検査へ影響する場合があるためです。検査のために薬を中止するかは病院の指示を受け、自己判断で変更しないでください。
外用治療と内服治療は、深さと広がりで選ぶ
2025年のISCAIDガイドラインでは、皮膚の細胞診と背景原因の管理を重視し、状態に応じて外用治療を活用します。細菌性皮膚炎なら全て内服の抗菌薬が必要、という考え方ではありません。
表面や浅い感染では、外用が中心になる場合がある
薬用シャンプー、洗浄剤、拭き取り製品などを、病変の位置や範囲に合わせて使う場合があります。製品ごとに成分、接触時間、すすぎの要否、使用頻度が違うため、「殺菌できるものなら同じ」と置き換えないでください。
毎回の全身洗浄が難しい場合も、無理に指示の回数だけを減らすより、部分的なケアや別の剤形を相談します。皮膚の状態と、家で続けられる作業の両方を伝えることが大切です。
深い感染などでは、全身治療と再診が重要になる
深い感染や外用だけでは難しい状態では、培養等を参考に内服などの治療を検討します。薬の種類、使う期間、再診時期は感染の深さと反応で変わり、全頭に同じ日数を当てはめることはできません。
赤みが消えたら即中止する、残った薬を次回へ取っておく、効かない気がするので量を増やす、といった変更はしません。再診で病変や細胞診を評価し、終了・継続・変更の判断を受けます。
シャンプーや外用をするときは、手順と痛みを確認する

初回は使う場所、量の目安、頻度、犬が舐めないようにする方法を具体的に聞きます。目、耳、粘膜へ付けてよいかも製品で異なります。人用の消毒剤を薄めて代用しないでください。
家でのケアを始める前の確認
- 濡らす範囲、塗る場所、接触時間、すすぎの必要性。
- タオルや乾燥の方法。強くこすらず、皮膚を刺激しない。
- 犬が痛がったとき、赤みが増えたときの連絡先。
- 舐め防止用品を使う場合のサイズ、飲食と休息への影響。
- 外用と内服を実施したことを家族で共有する方法。
しみる、痛がる、腫れるなどの変化があれば、無理に続けず病院へ連絡します。嫌がる犬を強く押さえ付けると、犬と人のけがにつながります。作業を分ける、病院で実演してもらうなどの方法を相談しましょう。
治療中は「新しい病変が出ていないか」も見る
かゆみが軽くなったことだけでなく、膿疱や湿った部分が減るか、新しいぶつぶつが出ないか、痛みや臭いがどう変わるかを記録します。同じ部位を似た明るさで撮ると、再診で比較しやすくなります。
例えば「お腹の赤みは薄くなったが、昨日から脇に新しいぶつぶつがある。内服は指示通り、シャンプーは1回実施」のように残します。よくなった部分と残った部分を分けて伝えてください。
内服後に嘔吐や下痢、食欲低下などがあれば、薬の名前と投与時刻を知らせます。飲ませ忘れや吐き戻しも隠さず伝え、次の投与をどうするか確認します。
再発したときは、前の薬を繰り返す前に原因を見直す
再発は、元の皮膚病が十分に管理できていない、別の病気が重なった、治療が生活に合わず続かなかったなど、複数の理由で起こります。毎回同じ菌、同じ薬でよいとは限りません。
耐性菌が心配な場合も、強い薬を希望するより、診察と検査で必要な薬を選ぶことが重要です。家では手洗い、汚れた寝具の管理、患部を人の傷へ触れさせない工夫を行い、特別な衛生上の注意が必要かを病院へ確認します。
費用は、検査・外用・内服・再診に分ける
初回の皮膚検査、必要な培養、薬、洗浄用品、再診を分けて聞きます。繰り返す場合の背景疾患の検査は別です。家での外用が難しいことや予算を最初に伝え、続けられる計画を作ってください。
次の受診には病変の写真、薬と洗浄の実施記録、前回の検査結果を持参します。感染が落ち着いた後に、背景のかゆみや皮膚のしわなどをどう管理するかまで相談すると、再発時にも取る行動が明確になります。