犬が夜鳴きするときはどうする?自宅で確認したいことと受診の目安

犬が夜鳴きするときはどうする?自宅で確認したいことと受診の目安

犬が夜鳴きするときは、単なる「わがまま」や「癖」と決めつけないことが大切です。排泄、空腹、痛み、不安、環境の変化、加齢による感覚の低下、認知機能の変化など、複数の要因が関係することがあります。

夜鳴きが始まった年齢・時間帯・鳴く前後の行動・昼間の様子を記録し、「何をすると落ち着くか」まで確認すると原因を探りやすくなります。

 

特にシニア犬で、夜鳴きに加えて昼夜逆転、徘徊、見当識の低下、トイレの失敗、家族への反応変化などがある場合は、認知機能の変化も含めて動物病院へ相談してください。

まず夜鳴きの緊急性を確認する

夜鳴きそのものより、痛みや呼吸異常、神経症状などが隠れていないかを先に確認します。

【すぐ受診を考えたい状態】

  • 強く痛がる、触ると悲鳴を上げる
  • 立てない、歩けない
  • 呼吸が苦しそう
  • けいれん、意識低下がある
  • お腹が急に膨れて苦しそう
  • 尿が出ない、何度も排尿姿勢を取る
  • 嘔吐・下痢を繰り返している
  • 急に徘徊や混乱が強くなった

夜だけ鳴くからといって行動の問題と決めず、急な変化や全身症状がある場合は先に身体的な原因を確認してください。

自宅で確認したい8つのポイント

夜鳴きの原因を絞るには、鳴く時間だけでなく、その前後の行動や昼間の様子まで記録します。

1|何時ごろ鳴くか

寝入り直後、深夜、明け方など、時間帯を記録します。毎晩ほぼ同じ時刻か、日によって違うかも確認します。

2|鳴く前に何をしているか

寝床から起き上がる、部屋を歩き回る、ドアの前へ行く、水を飲む、排泄姿勢を取るなど、鳴く直前の行動を見ます。

3|排泄が関係していないか

高齢犬では夜間に尿意や便意が増えることがあります。排尿回数や飲水量が増えている場合は、腎臓病・糖尿病・内分泌疾患など身体的な原因も確認が必要です。

4|痛みがないか

関節痛、背中や首の痛みなどがあると、横になれない、何度も寝返りする、立ち上がって鳴くといった行動が出ることがあります。Merck Veterinary Manualでも、痛みは落ち着かなさ、夜間覚醒、発声の原因になり得るとされています。

5|昼間に寝すぎていないか

活動量が減り、昼間に長く眠ると夜に目が覚めやすくなることがあります。特にシニア犬では睡眠・覚醒リズムの変化がみられることがあります。

6|見えにくい・聞こえにくい様子がないか

視覚や聴覚が低下すると、暗い部屋で不安が強くなることがあります。家具にぶつかる、呼びかけへの反応が弱いなどの変化も記録します。

7|環境変化や不安がないか

引っ越し、家族構成の変化、寝床の変更、留守番時間の増加、騒音などがきっかけになることがあります。

8|昼間の行動にも変化があるか

迷う、同じ場所を歩き続ける、壁を見つめる、家族との関わりが減る、トイレの失敗が増えるなどがないか確認します。

シニア犬の夜鳴きでは認知機能の変化も確認する

AAHAのシニアケアガイドラインでは、犬の認知機能不全でみられる代表的な変化として、DISHAAという考え方が使われています。

項目 見られる変化の例
見当識 家の中で迷う、角で立ち止まる
交流 家族への反応が変わる
睡眠 昼に寝て夜に起きる
排泄 トイレの失敗が増える
活動 徘徊、反復行動、活動量変化
不安 夜間の不安、鳴き、落ち着かなさ

AAHAは、認知機能不全は他の病気を除外しながら診断する必要があり、身体検査、神経学的評価、血液・尿検査などが重要としています。痛みや臓器疾患でも似た行動変化が出るため、夜鳴きだけで認知症と判断することはできません。

VCAでも、犬の認知機能不全では夜間覚醒、睡眠リズムの乱れ、過剰な発声、見当識低下、不安などがみられるとされています。

自宅でできる夜鳴き対策

身体的な不快や病気の可能性を確認したうえで、生活環境と睡眠リズムを整える方法を試します。

寝る前の排泄を確認する

就寝前に無理のない範囲で排泄できる時間を作ります。夜間に排泄が必要な犬では、寝床からトイレまで安全に移動できる環境を整えます。

昼間の活動と休息のバランスを整える

体調に合う範囲で散歩や遊び、知育遊びなどを取り入れます。ただし、疲れさせれば夜眠ると考えて過度な運動をさせるのは避けます。

寝床を見直す

滑りにくい床、段差の少なさ、室温、寝床の硬さなどを確認します。関節痛がある犬では、横になりやすく起き上がりやすい寝床が必要になることがあります。

暗さへの不安があるなら足元灯を検討する

視力が低下したシニア犬では、真っ暗な環境で不安になることがあります。まぶしすぎない足元灯で移動しやすくなる場合があります。

夜鳴きの記録を取る

鳴いた時間、長さ、直前の行動、何をすると落ち着いたかを記録します。動画が撮れる場合は診察時に役立つことがあります。

記録例

  • 23:30 寝床から起きて徘徊
  • 23:40 鳴き始める
  • 23:45 排尿後に落ち着く
  • 翌日 日中の睡眠時間が長かった

夜鳴きへの対応で避けたいこと

【避けたい対応】

  • 大声で叱る
  • 痛みや排泄要求を無視する
  • 自己判断で人用の睡眠薬を使う
  • 認知症と決めつけて受診しない
  • 夜だけケージへ閉じ込めて解決しようとする
  • 眠らせるために急に運動量を増やす

鳴くたびに食べ物を与えるなど、結果的に夜鳴きを強化する対応にも注意が必要です。ただし、まず身体的不快や排泄要求がないことを確認したうえで行動面を考えます。

夜鳴きが続くとき、動物病院では何を確認する?

夜鳴きの診察では、行動だけを見るのではなく、身体的な病気や痛みを除外します。

確認・検査 目的の例
身体検査 痛み、関節、心肺、腹部などを確認
神経学的評価 見当識、歩行、神経症状などを確認
血液検査 内臓疾患、血糖、内分泌などを必要に応じて評価
尿検査 多飲多尿や夜間排尿の原因確認
画像検査 痛みや神経疾患などが疑われる場合に検討

AAHAでは、認知機能不全は除外診断であり、痛み、臓器疾患、頭蓋内疾患など類似症状を示す病気の確認が重要としています。

認知機能不全と診断された場合の管理

認知機能不全と診断された場合は、生活環境の調整、適度な運動や知的刺激、食事、必要に応じた薬物治療などを組み合わせて管理します。

AAHAのガイドラインでは、犬の認知機能不全に対してセレギリンが承認薬として紹介されています。ただし、薬の適否や併用薬との関係は犬ごとに異なるため、自己判断で使用するものではありません。

「夜鳴きを止める薬」を求めるのではなく、何が夜鳴きの原因になっているかを確認して治療方針を決めることが重要です。

夜鳴きで受診するときに伝えたいこと

受診前メモ

  • 夜鳴きが始まった時期
  • 鳴く時間帯・回数・長さ
  • 鳴く前後の行動
  • 昼間の睡眠時間
  • 排尿・排便の変化
  • 飲水量・食欲の変化
  • 歩行・立ち上がり・痛みの有無
  • 家の中で迷う・徘徊するか
  • 家族への反応の変化
  • 最近の環境変化
  • 現在使っている薬・サプリ

行動の動画や、数日分の夜鳴き記録があると、診察室だけでは分かりにくい睡眠・行動の変化を伝えやすくなります。

犬の夜鳴きは原因を分けて確認する

犬が夜鳴きするときは、排泄、痛み、不安、生活リズム、感覚機能の低下、認知機能の変化など複数の原因を考えます。

特に急に始まった夜鳴き、痛み、歩行異常、呼吸異常、排泄異常を伴う場合は、しつけの問題と決めつけず動物病院で身体的な原因を確認してください。

シニア犬では昼夜逆転や認知機能の変化も考えられます。鳴く時間と前後の行動を記録し、必要な環境調整と医療的な確認を組み合わせて対応しましょう。