犬のよだれが多いときの診療費は、原因によって大きく変わります。口の中の炎症や歯周病が疑われる場合と、吐き気、異物、中毒、食道・胃腸の病気、代謝性疾患などが疑われる場合では、必要になる検査や処置が異なるためです。
診療費は「診察料+口腔内の確認+必要な検査+原因に応じた処置・薬+必要なら鎮静/麻酔・入院+再診」の合計で考えるのが基本です。
よだれが多いときに発生しやすい診療費
判断材料を見比べやすいよう、主な違いを表で整理します。
| 項目 | 主に確認すること |
|---|---|
| 診察料 | 発症時期、食欲、嘔吐、誤食、全身状態 |
| 口腔内診察 | 歯・歯ぐき・舌・異物・傷・腫瘤 |
| 血液検査 | 脱水、炎症、腎臓・肝臓、代謝異常など |
| X線検査 | 異物、胸腹部、歯科領域など |
| 超音波検査 | 胃腸・腹部臓器など |
| 処置 | 異物除去、洗浄、歯科処置など |
| 鎮静・麻酔 | 詳しい口腔内確認や歯科処置など |
| 入院・点滴 | 中毒、脱水、重症例など |
動物病院の診療料金は全国一律ではない
日本獣医師会は、動物病院の診療料金は各病院が個別に設定しており、全国共通の基準料金はないと説明しています。
また、実際の支払額は診察、検査、処置、薬など各項目を合算した金額になります。
「よだれが多い=○円」と考えるのではなく、原因を調べるために何の検査が必要かを確認して総額を見積もることが大切です。
初診料・再診料が最初にかかる
検査や処置とは別に、初診料または再診料がかかります。
日本獣医師会の令和3年度調査では、初診料の中央値は1,500円、再診料は750円でした。
ただし、これは令和3年度の全国調査結果であり、現在の各病院の料金を示すものではありません。時間外・夜間受診では追加料金が発生する場合があります。
まず口の中を確認する
Merck Veterinary Manualでは、犬の過剰なよだれの原因として、口腔内の炎症、舌炎、異物、腫瘍、外傷、歯の問題などが挙げられています。
診察では、歯、歯ぐき、舌、上あご、頬の内側などを確認します。
口腔内で確認する主な項目
- 歯石・歯周病
- 折れた歯
- 口内炎・潰瘍
- 舌や上あごに刺さった異物
- 傷・やけど
- しこり・腫瘤
- 出血
痛みが強い犬では鎮静・麻酔が必要になることがある
口が痛い犬は、普段おとなしくても口を触られることを強く嫌がることがあります。
異物が奥にある、舌の裏や咽頭まで確認する、歯科処置が必要といった場合は、鎮静や全身麻酔が必要になることがあります。
鎮静・麻酔を使う場合は、処置料だけでなく、麻酔前検査・麻酔管理・薬剤・モニタリングなどの費用が加わることがあります。
歯周病・歯の異常なら歯科処置費が加わる
歯周病、歯の破折、歯根の病変などが原因の場合は、歯石除去や抜歯などの歯科処置が必要になることがあります。
Merck Veterinary Manualでも、口腔内の炎症や歯科疾患はよだれの代表的な原因です。
歯科処置では一般に、麻酔、歯科X線、スケーリング、抜歯、薬、術後再診などが組み合わさるため、単純な診察だけより費用が大きくなります。
口腔内の異物なら除去処置が必要になる
木片、草の種、骨片、糸などが歯の間・舌の下・口腔内に入り込むと、よだれが急に増えることがあります。
VCAでも、口腔内異物は過剰なよだれの原因として挙げられています。
簡単に取り除ける場合は処置が小さく済むこともありますが、奥に刺さっている、犬が強く痛がる場合は鎮静・麻酔が必要になることがあります。
吐き気・胃腸疾患が疑われると血液検査や画像検査が追加される
犬は吐き気があると唾液分泌が増え、よだれが多くなることがあります。
VCAでは、胃腸障害、乗り物酔い、平衡感覚の異常などで吐き気が起き、よだれが増えることがあるとしています。
嘔吐、食欲低下、腹痛、下痢などがある場合は、口だけでなく全身の検査が必要になることがあります。
- 血液検査
- 腹部X線検査
- 腹部超音波検査
- 尿検査
消化管異物が疑われると検査・手術費が増えることがある
おもちゃ、布、骨、包装材などを飲み込んだ場合、食道・胃・腸で異物が詰まることがあります。
VCAでは、消化管異物の診断に腹部X線を使い、必要に応じ血液・尿検査なども行うとしています。
異物の場所や形によっては、内視鏡による摘出や手術が必要になるため、診療費は大きくなります。
異物で追加されうる費用
- 複数方向のX線撮影
- 造影検査
- 超音波検査
- 内視鏡
- 鎮静・全身麻酔
- 手術
- 入院・点滴
中毒が疑われる場合は緊急処置・入院費が発生することがある
薬、洗剤、植物、化学物質などを舐めたり食べたりした場合、よだれは中毒症状の一つとして現れることがあります。
Merck Veterinary Manualでは、薬物・毒物、腐食性物質などが過剰な唾液分泌の原因になるとしています。
中毒が疑われる場合は、費用確認より受診を優先してください。自己判断で吐かせることは避け、摂取した物の容器・成分表示・量・時間を病院へ伝えます。
状態によっては、血液検査、心電図、点滴、解毒・支持療法、入院などが必要になります。
腎臓・肝臓など全身疾患でも血液検査が必要になることがある
Merck Veterinary Manualでは、腎不全や肝性脳症などの代謝性疾患もよだれの原因として挙げています。
口の中に明らかな原因がなく、食欲低下、嘔吐、体重減少、元気低下、多飲多尿などを伴う場合は、血液検査や尿検査を追加することがあります。
検査項目が増えるほど費用も増えるため、何を疑っている検査なのか確認すると理解しやすくなります。
唾液腺の病気では画像検査や処置が必要になることがある
唾液腺の炎症、閉塞、嚢胞などでもよだれが増えることがあります。
首や顎の下に腫れがある、飲み込みにくい、口の中が膨らんでいる場合は、触診や画像検査などで評価することがあります。
原因によっては外科処置が必要になることもあります。
X線検査の費用は撮影枚数・部位で変わる
日本獣医師会の令和3年度調査では、単純X線撮影の中央値は4,000円でした。
ただし、胸部・腹部・歯科など撮影部位が異なり、複数枚撮影、造影、鎮静などが加われば金額も変わります。
「X線4,000円」と固定で考えず、何枚撮るのか、追加撮影が必要になった場合の料金も確認します。
血液検査は項目数で費用が変わる
血液検査には、血球検査、生化学検査、電解質など複数の項目があります。
中毒、脱水、肝臓・腎臓、炎症など、何を疑うかによって検査項目が変わります。
見積もりでは「血液検査一式」だけでなく、どの項目を確認するか聞いておくと分かりやすくなります。
入院が必要になると費用が大きくなる
中毒、重度の脱水、異物手術、強い嘔吐、食事・水分が取れない状態などでは入院が必要になることがあります。
入院では、入院基本料に加えて、点滴、注射、検査、投薬、処置などが日ごとに加算される場合があります。
入院が必要になったら、1日あたりの概算と、何日程度を想定しているか確認します。
診断後も再診・薬代が必要になることがある
口内炎、歯科疾患、胃腸疾患、腎臓・肝臓の病気などでは、初回の治療だけで終了しないことがあります。
- 再診
- 血液検査の再確認
- 薬の追加・変更
- 抜歯後の確認
- 食事管理
初回の支払額だけでなく、「治療が終わるまでに何回通う可能性があるか」も確認すると家計を組みやすくなります。
見積もりでは「検査」「処置」「その後」を分けて確認する
受診や検査の前に整理しておくと役立つ項目を、優先度が分かる形で確認します。
【見積もりで確認したい項目】
- 初診・再診料
- 口腔内診察
- 血液検査
- X線・超音波
- 鎮静・麻酔
- 歯科処置・異物除去
- 内視鏡・手術
- 点滴・入院
- 薬
- 再診・再検査
「まずどこまで調べるのか」「結果によって次に何をするのか」を確認すると、費用の段階が分かりやすくなります。
原因と対処の記事も合わせて確認する
よだれの原因には、歯科・口腔内疾患、異物、吐き気、中毒、代謝疾患などがあります。
症状の原因を知ると、なぜ口腔内の確認だけでなく血液検査や画像検査まで必要になる場合があるのか理解しやすくなります。
急によだれが増えたときに、自宅で確認するポイントと受診の目安は次の記事で整理しています。
受診前に記録しておくと診察に役立つ
続けやすさを重視し、日常で確認しやすい項目に絞って整理します。
- いつからよだれが増えたか
- 急に増えたか、徐々に増えたか
- 食欲・水分摂取
- 嘔吐・吐き気・下痢の有無
- 口を気にする・顔をこするか
- 血の混じったよだれがあるか
- 異物を食べた可能性
- 薬・洗剤・植物などへの接触
- 現在飲んでいる薬
写真や動画も、症状の程度を伝える助けになります。
ペット保険を使う場合は補償条件を確認する
よだれの原因となる病気の診察・検査・治療が補償対象になるかは、契約内容によって異なります。
- 通院・入院・手術の補償
- 補償割合
- 免責金額
- 1日・年間の限度額
- 既往症・待機期間
- 歯科治療の扱い
特に歯科治療は、保険商品や原因によって補償の扱いが異なるため、約款や保険会社へ確認してください。
費用を抑えるために受診を遅らせない
よだれの増加を放置し、異物・中毒・重い歯科疾患などが進行すると、検査・手術・入院が必要になり、結果として費用が大きくなることがあります。
予算に不安がある場合は、受診を避けるのではなく、診察時に予算を伝えて「今すぐ必要な検査」「次の段階で行う検査」を相談してください。


